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東京を巡る対談 月一更新

無良崇人(フィギュアスケーター)×平本正宏 対談 音楽を愛して止まないプロフィギュアスケーター

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〈和楽器を使ってショーナンバーを作ってみたい〉

平本 現在、プロに転向されて、何か新しいことをやってみたいことはありますか?

無良 そうですね、長年考えつつもやれていないなと思うことがあって、和楽器を使ってショーナンバーを作ってみたいんです。以前古事記を使ってプログラムを組んだことはあったので、それのようにやってみたいですね。日本人の選手でも和物を使って滑る人っていないんですよ。歌舞伎とのコラボレーションをした「氷艶」を観て、こういう日本人らしさを感じる演目ってやってみたら面白いかなと思ったんです。ただなかなか滑るのに合う和楽器の曲が見つからなくて。

平本 昔「能」の音楽を作ったことがあるんです。大鼓、能管、笙を使って30分の曲を書いたのですが、驚いたのが演奏者の方たちの演奏バリエーションの多さでした。僕はそのときまで和楽器を使った曲は書いたことがなかったのですが、いくつかイメージを伝えると、彼らの演奏してきた数々の作品の中からそのイメージ近いものをサッと演奏してくれるんです。あの曲の、この部分みたいに演奏しようと一人が発案すると、サッと合わせられる。もちろん僕が一から作曲する部分もありましたが、彼らの提案を元に作曲を進めた部分もありました。もちろんコンセンサスの取りやすい、いい演奏家と出会えたことが大きいのでしょうが、でもイメージだけであそこまでできるんだということにはビックリしました。和楽器の曲、見つからないようでしたら僕が書きますよ。

無良 なかなかイメージがついてないのもあるのですが、大まかにやってみたいというのはありますね。日本古来のものって結構海外の受けがいいんですよ。ただ音が細かすぎると、もうすでに滑り終わってしまうこともあるんです。基本的に足が常に動いている競技なので、細かい音が多すぎると使いにくいんです。僕が好きなEDMがスケートに向かないのは一定の早いリズムが続いたままだと緩急がないから。仮にEDMでやるとしても途中で飽きてしまうし、試合ではなかなか使えないですね。やはりミュージカルやクラシックが使われるのは曲の中に強弱がありますし、一つの曲の中に色々なリズムがあるからなんです。強弱、バランスを保つのがスケートをやる上では欠かせないですね。

平本 そうなんですね。スケートのために曲を作ってもらう、生演奏って確かにあまり見ないですね。

無良 ショートでは生演奏はたまにあるんですよ。僕も藤井フミヤさんとコラボしたことがあって、お互いに阿吽の呼吸で合わせないと難しいのですが、とても楽しかったです。

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