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東京を巡る対談 月一更新

大山エンリコイサム(美術家)× 平本正宏 対談 そぎ落として現れる根源からの未来



<方程式自体が変化するフィードバック>

平本 人やものや場所に対して、自分がそこにどうアプローチしていくかということは活動として続けていく感じなんだね? むしろそれが大山くんならではの活動であるというか?

大山くんってメディアを限定しないでしょ。どのメディアにのったらどうなるのか、でもQTSは共通している。そうなると少し気になるのが、まだアプローチしていないメディアだったり、人だったりと共同作業したときに、QTSというモチーフさえ変更してしまうときがくるのか、その可能性はあるのかということなんだけど。

大山 その可能性はあるかもしれない。関数で言えばQTS=不変数、いろいろなメディアやコラボレーション=変数なのだけど、いろいろな変数を当てはめていくうちにフィードバックで方程式全体が変わっていくということなのかな。ただ、そのときにはもうクイックターン・ストラクチャーとは呼んでいないかもしれないね。

まあいずれにしても、結果的に変化していくことに対しては自分を開いているつもりだけど、それを目的化しているわけじゃないかな。変化するために制作しているわけじゃないだろうし。たとえば人生のなかで人が自然と成長したり変化していくのと同じように、しかるべきタイミングや必然性に出会ったときに、QTSも自然に変化していくんじゃないかと。自画像みたいな感覚もありますね、そういう意味では。

平本 そのQTSを獲得したのはいつ頃?

大山 最初は高校生のとき、授業中にプリントの裏とかにふつうのグラフィティのドローイングをかいていたのが始まりかな。


高校生の頃にかかれたグラフィティ・レタリングのドローイング(一部)。

平本 まじめな生徒だったんだねえ。授業中なんて(笑)、ぼくはマンガばかり読んでいたけど。

大山 この頃は文字を崩して名前をかくっていうグラフィティの基本をやっていたの。でも、文字の型をはずして線の運動だけでかいている部分も少しずつ出てくる。そういうことを繰り返していくうちに、無駄なものをそぎ落としてQTSに近づいていったんだよね。そういうミニマライズしていくプロセスが原点にあったかな。QTSを獲得してから、その表現力をどう拡張していくかっていうことに取り組んでいるのがいまの段階かな。10年くらいはやっているね。

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