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東京を巡る対談 月一更新

田中雅臣(天文学者)×平本正宏 対談 千億の星を眺めながら



田中雅臣(天文学者)×平本正宏 対談

収録日:2014年10月30日

収録地:東京駅 新幹線ホーム

撮影:moco

<超新星爆発への興味>

平本 今回の対談、非常に楽しみにしていたんです。超新星爆発って宇宙の色々な謎がそこに隠されていると言いますよね。最近の日経サイエンスでは1つ上の次元の宇宙(4次元宇宙)での超新星爆発が我々の宇宙を創造するきっかけになったという学説も発表されたくらいですし、宇宙にある物質の多くは超新星爆発で作られていますし。いやー本当に今日は思う存分語って頂きたいと思っています(笑)。

まずはじめにお聞きたいのですが、そもそもなぜ田中さんは超新星爆発に興味を持たれたんですか?


田中 宇宙って138億年続いているんですけれども、宇宙にあるほとんどの天体っていつも同じ、実際はそうではないのですがいつも同じように見えるんですね。僕たちは100年も生きられないじゃないですか。その100年間では、例えば銀河という星の集合は僕たちにとっていつ観ても同じような形ですよね。


平本 宇宙規模でいえば100年は本当に短いですもんね。


田中 それに比べて、星の爆発というのは、一瞬の出来事なんですよ。すごいパワーが出て、そこから2週間ぐらいかけて明るくなって、1年ぐらいかけて暗くなるんですね。この1年というのも地球が太陽の周りを一周する公転周期で勝手に決まってるじゃないですか。その1年という時間と宇宙で起きている爆発現象の時間の長さが偶然一緒なんですよね。なので、星が爆発しているのを研究していると、僕が生きている間、しかもたった1年の間にもたくさんの爆発を見られるわけです。年間500個くらいの星が爆発しているんですよ。


平本 500個!そんなにすごい数が!




田中 宇宙で自分たちが見えている範囲の中でも年間500個くらい爆発しています。そういう動きのある宇宙の姿というのが好きですね。いつも同じ姿を見ているとつまらなくなっちゃって、昨日いなかったやつが今日いる!みたいな方が楽しいです(笑)。


平本 超新星爆発というのは宇宙の中でも、ものすごく瞬発性の高い、動的なものなんですね。


田中 動的ですね。だから僕も普段から結構足下がふわふわしながら動いている時が多いです。


平本 そうなんですか(笑)。でもそれこそ1年に500個も爆発しているのでしたら、じゃんじゃん観測して行かないと間に合わないんじゃないですか?


田中 岡山県と長野県の木曽に望遠鏡がありまして、そこで年間100夜くらい観測しています。両方の望遠鏡で連携を取って、昨日いなかった新しいものが見つかると長野から岡山に連絡したりしています。


平本 2カ所とも国立天文台の施設ですか?


田中 岡山は国立天文台のブランチの一つで、木曽観測所というのは東京大学の施設なんですよ。ただ、あまり境目も無く使わせてもらっています。

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