document

東京を巡る対談 月一更新

村上祐資(極地建築研究者)× 平本正宏 対談 月より遠い南極〜薄曇りの極夜に音は潜んで

収録日:2011年6月2日

収録地:丸子橋(東急東横線多摩川駅南口徒歩7分)

対談場所:某焼き鳥店(自由が丘駅至近)

撮影:moco

<南極経由宇宙行き>

村上 極地建築という名称で、人間と建物の関係性、これをテーマに研究しています。僕が訪れた南極などの極地では、その関係性が強く、自分を鎧わずに生きていけない。建物もすぐ朽ち果てる。山小屋を例にとると、人間が夏に来て、風通しを良くするだけで、建物は息を吹き返す。人間が住まなくなった山小屋は2〜3年で、こんなに!? ってくらいボロボロになる。極地の建物と人間は、かようにお互い持ちつ持たれつの関係にある。だから、そこへ行くことで人間の本質が見えてくる。その本質が知りたいと思っているんです。

    大学院の博士課程に在籍して、極地を自分の体で体験し、リサーチしているのが現段階ですが、いずれは月とかで、普通に人が生活できるようにすることを目指しています。

    学部時代からずっと言い続けているんですが、本当は月へ行きたいんですよ、エクスペディションとして。自分が月へ行くためには、どうしたらいいか。そう考えたときに、僕がやっているのは建築なので、月面に基地を作ることだろうと。基地をデザインするのは地球でできる。そのあと、月へ行き、施工して自分で住みたい。

平本 自分を実験台として見てらっしゃるんですね。単純に建てるだけでなく、極地に普通に住めることの証明もしたい、と。

村上 いつの頃からか、南極経由で宇宙へ行こうと思うようになりました。で、実際、南極地域観測隊として参加してみて、いろんな意味でいい経験になりました。


南極のアデリーペンギン(撮影:村上祐資)

平本 そういう考えはいつごろから出てきたんですか、月へ行く前に南極へ行っておこうというのは。

村上 まず、なぜ宇宙へ行きたいかという動機から話させてもらうと、そもそもは「バイオスフィア2プロジェクト」にすごく影響を受けているんです。

1 2 3 4 5 6 7 8 9