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東京を巡る対談 月一更新

中村大史(音楽家)×平本正宏 対談 もはや夫婦のような関係?

中村大史(音楽家)×平本正宏 対談

収録日:2014年7月28日

収録地:上野公園

対談場所:谷中ボッサ
http://www.yanakabossa.jp/index2.htm

撮影:moco

<楽器が馴染んでからの音楽>

平本 さあ何から話そうか(笑)。こういう風にパブリックに2人で話すのは初めてだから、なんか照れるね(笑)。

今年の9月にCDをリリースするんだけど、それにももちろん中村くんには参加してもらっていて、それでふと思ったんだよ。そういえばもう一緒に仕事をし始めて4年になるなって。

この4年間スターダンサーズバレエ団の音楽に始まり、篠山紀信さんとのコラボレーションコンサート、Tekna TOKYO Orchestra、映画『さよなら渓谷』に今回のCD『CHAMBER MUSIC ONE』、自分にとってとても重要な作品を全部一緒に作業してきている。そんな中で中村くんとが一番音楽の話をしているんじゃないかなと。スタジオ内でだったり、お茶しながらだったり、お酒を飲みながらだったり、色々なシチュエーションで。中野の立ち飲み屋に冬の寒い日に4時間もいて話し込んだりとか(笑)。

だから一度ちゃんと話したいなと思いました。

あと、中村くん個人が活動として、転換点というかちょっと変わって来たでしょ? 演奏活動が色々な方向に向かい始めていて、ライブやコンサートだけじゃなく舞台音楽やギターソロなんてこともし始めていて、面白いなと。活動を大きく占めていたバンドのJohn John Festivalが休止になって、1人の音楽家として益々挑戦して行くタイミングかなと思い、それは面白そうだなと思ったことも大きい、ぜひ話を聞きたいなと。

音楽活動について、今までやってきたことは、自分でどう位置づけていますか?



中村 今までやっていることの中で、やれることとやりたいことの2つが良いバランスで保たれています。普段やれないことだけど、出会いがあるおかげでチャレンジできたというのもありますね。ライブをするということに関しても、その場所とのつながりとか、会場の人たちへの意識があって。例えば地方へ演奏しに行く時は、回を重ねて現場の人たちと培ってきたものとか、自分たちのコミュニティとかの方が大事と思うんですよ。アイリッシュのライブの時でも、ただ単にライブをするだけでなく、自分の音楽が聴いてくれる人たちに届くといいなって考えていますね。

平本 アコーディオンって何年くらい演奏しているの?

中村 6年。ギターは8年。その他の楽器は6か8年です。楽器を始めた時期は20から23の頃ですね。

平本 じゃあどれも5年以上だから、大分身体にも馴染んできたでしょ?

中村 一つの楽器にしぼってないので、この楽器の技術を上げて見せるという選択よりも、こういう音楽にこの楽器をセレクトしたという理由があるので、ある程度楽器が馴染んできてから、音楽に使えてきています。

平本 その馴染みというのはいつぐらいから出てきた?

中村 2年、3年くらい前から、じわじわくる感じですね。言ってしまえばまだ馴染んでない感じもありますし。例えばアイリッシュに関して言えば、馴染み方がかなり軽い。少し話が飛んじゃうんですけど、この間やったライブが久しぶりだったので、少し下手になっちゃってるんですよ。上手いことが持続されなきゃ出来ない音楽ってあるじゃないですか。上手いにもいろんな種類があって、奏でるのが速いとか、指の動きが速いと上手いというのもあるし。

自分にとって、やりたいことのために上手くなるのは必要だけど、上手くなること、上手いのが持続されることが目的にはならないなって思って。
今、自分にとって結構危険だなって感じてます。若くてパワーがあるからできているパフォーマンスがあって、いずれ出来なくなるなって。
衰えというよりは、自分の興味ややりたいことがもしアイリッシュ音楽と別のところでむくむく育ったときに、今やっていることができなくなるんじゃないかって恐れを感じています。
アイリッシュ自体、凄く上手く弾くのが目的の音楽ではなくて、コミュニケーションの音楽だから、そこを大事にさえできていれば、と思っています。
勿論、上手くないとできないコミュニケーションもありますが。

平本 なるほど。他にもやってみたいこと、目指しているものが出てきているという。

中村 やりたいことで出来ないことがあったら無理ですけど、ひたすら練習して基礎力を上げていくタイプじゃないですから、基礎練とかはしないですね。そういう基礎力を上げた方が色々出来るなって分かってやっているんですけど。

平本 その基礎練を例えばやったとしても、その基礎練がある種のジャンルのテクニカルな練習の方向には行かないということだよね。その意味では中村君が願っている方向と僕が中村君の音っていいなと感じている部分は重なっているかな。僕はどうも「○○っぽい」テクニカルな演奏とかが苦手で(笑)。

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