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東京を巡る対談 月一更新

中村大史(音楽家)×平本正宏 対談 もはや夫婦のような関係?

<来年は必ずソロアルバム!>

中村 あはは。音はやっぱり自分から出すわけだから、基本的に自分からは発したいというモチベーションがありますよね、自分の歌を聴いてもらいたいとか、メッセージ性を出したいとか。それがあってなんぼな瞬間もあるし、それが煩わしく感じる瞬間もあるし。意思や意図をどう考えるか。

平本 それは中村君の中ではどういう意識としてあるの?

中村 意志は必ずあった方が良いと思うんです、意志は自分の中のエネルギーだから。もちろん、外に自分のエネルギーを漏らさないとする自分の意志というのもありますし、相手を何も感じさせたくないとか、でもそれも意志ですから。



平本 自分の意志って本当に大切。基本のような気がするんだけど、これを忘れている人が結構多いんじゃないかと思うときがある。意志があると、こう演奏したいとか、こういう曲を作りたいとか、自分の音楽がこうありたいとか、自分がどうしたいかという力が出てくるから、それに必要な技術や素材を自分で獲得して行けるんだよね。最悪なのは、技術さえ積めばなんとかなると思っている人。これは絶対的に人の心に訴えるパワーが欠如してしまうから。

そういえば、6月末~7月末まで1カ月間イスラエルに行ってインバルピントのカンパニーのダンス音楽を作っていたけど、これから活動はどう? 今までのライブ活動に加えて、今年の後半以降新しい展開はどう考えているの?

中村 今までやっていたライブ活動というのは、生活の延長でした。もちろんステージの上に立っているという自覚はあるんですけど。今回ダンスのためにイスラエルで音楽制作していた期間というのは、生活とは完全に別々にあったんです。普段生活の中で音楽活動、ライブ活動をやっていると、結構ご飯を作ったりするのがめんどくさくなっちゃうんですよ。だけどイスラエルでは、舞台があって稽古があって、それと離れた関係で家があるから、家で普通に生活してご飯とか作ったり手紙書いたり。

平本 ああ、それは分かる気がする。仕事場があるんだよね、ちゃんと空間が別の。作業をするにはそこに行って、逆にそこを出たら作業はもうしない。どっちがよかった?

中村 どっちのスタイルが自分に良いのかなっていうのはまだ分からないですけど。このままいくとまた引き続き、生活の中に音楽がある日常に戻ると思います。ただ、1カ月イスラエルで住んでいて生活と音楽を分けるのも悪くないなって思いました。

平本 イスラエルでのそういった生活の経験と舞台の音楽を作った経験、どんなところが面白かった?



中村 本当に面白いことだらけで、ダンスの現場であったり制作の現場が英語のコミュニケーションですし、自分がリアルに感じている音に関して、ジャッジを持ち込めたというのがやっぱり嬉しくやりがいがありましたね。自分が信じて出した音が良かったり、逆に自分はやろうと思わなかったけど案外やってみるとありだなという音を出したり。その体験が出来たのは、良かったなと感じてます。

平本 そのジャッジメントというのは、今回はコミュニケーションという意味も含めて出していかなければならなかったわけじゃない? でも今までの活動の中でもジャッジ出来てたんじゃないかとは思わない?

中村 もちろんしている時もあるけど、普段はジャッジを他の人が出していることが多いですね。演奏する時でもまずその人がいることが大事であったり、あと割と僕自身も言わない方なので。あと、ジャッジを出す大切さが分かるので、敢えて言わないこともありますね。

今後ですが、ソロをやろうかなと思っています。ソロがどういう形になるか分からないですけども、それをやんないと、他とのバランスはとれないなって。自分が出発点だと思っているものに対してどれだけ苦労して面白く出来るのかやってみたいし。

平本 ソロを意識し始めたのはいつ頃?

中村 思い始めたのはもう1年半前から2年前ぐらいからなんですけど、それが向いているかまだ自分は分からないし、まずはやりたいからやるって感じですね。逆にソロが向いてないなって分かったら、他のものに集中して飛びつくだろうし。

平本 じゃあ今はソロとしての活動に意識が行っている状態なんだね。

中村 先に人とやる面白さを知って、それをたくさんやってきたというのもありますね。後はもっと苦労したいなっていうのもありますし(笑)。苦労もして、やりがいを感じながら妥協もせず、ですね。

平本 じゃあ来年の今頃には出ていると!

中村 自分でやるしかないので、狙いたい。やります!

平本 はい! 宣言したね(笑)。

中村 ふふふ。今頃にはアルバムが出ています!(笑)

平本 これからはソロアルバムに向けて活動をして。

中村 そうします!

平本 はい(笑)。

じゃあ最後に東京をイメージする場所として上野を選んだ理由を聞いて終わりたいと思います。





中村 やっぱり地元を離れて最初に過ごした4年間が上野だったからですね。一番最初に大学の受験で面接終わった帰り道に路上で生活しているのを観てすごい違和感を感じて。これから学費とか払って高い楽器とか買って、生活していきたいのに、目の前の光景にびっくりしちゃって。それが東京の最初のイメージになって。色んな人がいるっていう事実を突きつけられて。そこから始まり、友達と色んなところに行ったり。

平本 ここから離れて暮らしたのは?

中村 中野に1年2カ月くらい住んでいて。最初は取手で、町屋に4年、今は東大前に4年ですね。できれば東京じゃないところに住みたいですね。

平本 希望は?

中村 夏に暑くない場所が良い。

平本 じゃあ軽井沢は?(笑)

中村 軽井沢いいですね(笑)。夏の暑さがなければいいかな。あと東京は好きなので、逆に東京じゃないところに住みたいというのはあります。用事があって東京に行くみたいな。まあ、ちょっと良い暮らしがしたい! 適度に良い広さがあって、なんでも自分が納得いく過ごし方が出来る生活をまずしたいなというのはあります。別に山奥に住みたいというわけでもないので。

平本 じゃあ吉祥寺だね(笑)。

中村 ははは(笑)。

平本 そんな住宅相談もしつつ、中村くんとの対談を終わろうと思います。僕が大学3年生のときに入学してきたから10年の付き合いかあ。30年分の10年。もはや妻(笑)。

中村 そうですね(笑)。

平本 今日はありがとうございました。


中村 大史 / hirofumi nakamura

音楽家。アコーディオン、ギター、アイリッシュブズーキ、マンドリン等様々な楽器を使用して演奏・作曲する。
北海道生まれ、東京芸術大学音楽環境創造科卒。

アイルランド伝統音楽に明るく、tricolor, John John Festival, O’Jizo, O’Phan 等のグループのメンバーや個人として、全国各地でアイルランド音楽の演奏・普及活動に取り組んでいる。


またアコーディオンデュオmomo椿*での創作活動や舞台への演奏出演、映画やTVアニメ音楽の録音参加、楽器のレッスン、シンガーソングライターやバンドのサポート演奏等、多岐に渡った活動を展開している。


ミュージカル「100万回生きたねこ」(演出:インバルピント&アブシャロムポラック、主演:森山未來、満島ひかり、音楽:阿部海太郎、ロケット・マツ)出演

映画「さよなら渓谷」録音参加(作曲:平本正宏)
Illawarra Folk Festival(オーストラリア)出演(John John Festival)
Inbal Pinto & Avshalom Pollak Dance Company(イスラエル)「WALLFLOWER」音楽制作・出演(阿部海太郎、権頭真由、中村大史)など。

http://hirofuminakamura.com/

撮影:moco  http://www.moco-photo.com/

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