document

東京を巡る対談 月一更新

中村大史(音楽家)×平本正宏 対談 もはや夫婦のような関係?



<バンドのメリット、デメリット>

平本 そういう生活を思い返して、その良さに気づいたのはいつ?

中村 最近ですね。今は音楽活動であちこちに行ったりしているから、ライブ前の雰囲気とか場所の良し悪しも自分なりにすごい敏感に感じるようになれたので。場所は普通だけど人はすごい良かったり、場所はすごい良いけど人はあまりそぐわなかったりとか。

平本 そこを判断して、その日の自分の演奏を考える?

中村 そうですね。今日はのびのびやろうとか丁寧にやろうとか。でもみんな知らず知らずのうちにその場を読み取って行動を決めていると思います、演奏でなくても。ここのカフェだともたれかかるけど、あそこのカフェではちゃんとコーヒーを飲もうとか。みんなが無意識でやっていることを意識するのが好きみたいですね。個人経営で場所と来る人のカラーが同じところってあるじゃないですか、そういうところと自分の相性が合ったりすると好きになりますね。

平本 場所と人以外に、中村君は色んなアイリッシュのバンドで演奏しているけど、同じ曲でもメンバーが変われば中村くん自身の曲の感じ方も結構変わる?

中村 あります。一緒に演奏する相手が全然違っていて、人1人変わるだけでもスピード感は変わってくるし、音楽そのものも変わる印象です。でもその変化を楽しんでいる自分がいて。

平本 じゃあ、いくつものバンドに参加することは音楽的に楽しいんだね。ちなみにいまはいくつのバンドに参加しているの?

中村 John John Festivalをのぞくと、アイリッシュが3つ、バンドでは5つ。それ以外にサポートじゃない形、デュオとかトリオがいくつかあります。

平本 かなりの数でやっているね。

中村 同じ人と音楽を突き詰めなきゃいけないという考えもあるけど、僕はそういうタイプじゃないから。一緒にやる人といる空気とか、楽器の組み合わせ、アコーディオンのデュオなのかアコーディオンとパーカッションなのかで作る音楽も変わるので、そういうところを楽しんでいます。他の可能性を探していくつもバンドをやっているわけではないですね。もちろんメリット、デメリットもあると思います。

平本 沢山のバンドを同時にやることのメリットはどんなところ?

中村 やっぱり経験を積み重ねられるので、得意なことが見えやすいですね。それで得意なところを伸ばしていけます。

平本 逆にデメリットは?

中村 デメリットはスケジュールとか物量的に、あと自分の脳内のキャパ的にも限界があることです。それで悩むこともあるし、もっと人間くさい気持ちの問題もありますね。

平本 確かに常に活動していると、人間くさいことも起きるよね。すぐに話し合って解決っていうのが難しいこともあるだろうし。



中村 そうなんですよ。さっきも言いましたけど、僕が一つのことを突き詰めるタイプじゃないから、苦しんで苦しんで何かを手に入れることが、1人なら良いんですけど、誰かとだったりバンドではそれをやる気はあまり無くて。人とやる瞬間は僕としては楽しみたいんです。ただ、こんなにたくさんやっている自分が言うのもなんですが、バンドをたくさんやるのはあまり良いことではないと思います。

平本 なるほど。平本とやっていてどうですか(笑)。

中村 平本さんですか(笑)。

平本 4年間全く統一してないじゃない(笑)。エレキギターを弾いてもらう時もあれば、アコースティックの時もあるし。小さいものを含めると色々な仕事があったけど、なんか思い出に残っているものでもなんでも(笑)。

中村 ある程度任せてくれるのはすごい楽しくて。あと、僕はそんな歌は得意じゃないから、歌入れが一番苦手(笑)。

平本 結構歌ってもらっているよね。

中村 3、4回ありましたね。楽しいけど、歌に関しては自分の判断基準があまり無くて、それよりはTekna TOKYO Orchestraみたいに楽器のセレクトから任せてもらって演奏するのは楽しいですね。自分のやりたいことを理解して声をかけてくれたことが分かるからやり甲斐もあるし。曲の目的が普段他でやっているのとは違うので、今振り返るとそれが面白いかなって感じますね。曲との距離感、演奏者目線すぎず、作り込み過ぎな感じもせず、どちらかというと、外から客観的に見るところに完成形がある印象で、僕は冷静に弾いている感じです。僕は普段9:1で演奏者寄りのサウンドだけど、俯瞰するのも結構好きだなって差し戻してくれる音楽が平本さんの曲と言うか。

平本 それは伝わってて嬉しい。僕はほとんど5:5ぐらいで俯瞰している。絶対に音楽を作ることにのめり込む自分と、それを醒めて見る自分が50%から崩れないようにしたいというのがあるから。僕の分析をありがとう、勉強になります(笑)。

1 2 3 4 5