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東京を巡る対談 月一更新

田中雅臣(天文学者)×平本正宏 対談 千億の星を眺めながら



<時空のゆがみの音を聴く>

平本 こういうことにも今関わってらっしゃるんですか?


田中 これには直接関わっていないんですけど、もし中性子星が合体したらどう見えるかをシミュレーションしていて、実際それが先に見つかったわけです。これは去年ぐらいにサッと状況が変わった面白い出来事です。


時空が歪んでるので、一応波として周波数とか描けるんです。表記としては光ではなく、音に似ていますよね。


平本 時空の歪みって実際の音で表現できないんですか?


田中 出来ます。時空がどう歪むかというのも、時間と強さで捉えれば波なので、音に例えて聴くことが出来ます。




(実際にその音を聞いてみる)


平本 へー、サイン波を測定のために20Hzから20000Hzまで上げていくプログラムがありますが、そんな音がしますね。


田中 基本的には周波数がただただ上がっていくだけです。最後キューと周波数が高くなって、耳に聞こえなくなる。


平本 この周波数、歪みが地球にもたらす影響というのは大きいのですか?


田中 全くないです。我々は全く感じることも出来ませんし。


ただ、星が合体する現場に実際にいたら大変です。中性子星が近くにあるだけで大変なことなので。遠くの天体なので大丈夫ですけど。ちなみに、もし地球が重力波の影響を受けるくらいだったら、もっと簡単に捉えられていますね(笑)。


平本 それくらいの歪みが今までの最大の歪みなんですか。一番力が加わると、それくらい歪むと?


田中 そうですね。ただ、今まで説明したのは、太陽くらいの重さの中性子星の話です。宇宙にはもっと大きなブラックホールがありますから、これともう1個ブラックホールが合体すれば、もっと強いですね。そうすると今度は周波数が低くなります。


平本 すごいですね。1Hzにも満たなかったり?




田中 0.001Hzぐらいなので。1秒間に1回振動しないんですよ。


平本 確か太陽ってそれぐらいの音を出していますよね? 石川遼子さんとの対談のときにお聞きしましたが。


田中 5分で1振動ですね。太陽の振動も音にすることが出来るんですけど、聞こえる音にする時は周波数を上げないといけないんです。


これは光の場合と違いますよね。そもそも人間が星を見ることが出来ているのは必然なんですよ。地球で暮らす為には太陽の光を受けなきゃいけないですし、そこに順応するようできているんです。


平本 いやー、話を伺えば伺うほど、研究は面白いですね!


田中 楽しいので、毎朝飛び起きますよ(笑)。

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