document

東京を巡る対談 月一更新

會本久美子(イラストレーター)× 平本正宏 対談  手先からこぼれてくる<絵>と<音>と

<自分にとって「近い」「親しい」こと>

會本 平本さんは子供の時どんな遊びしていましたか? 思えば独特だったりしますか? やっぱり音を探したりしていたのですか?

平本 子供の頃ですか。うーん。僕、音楽をちゃんとやり出したのが中学生くらいで、それまでは音楽よりも昆虫採集とかに夢中でした(笑)。

ただ、自分でもどうしてやったかは覚えていないんですけど、小学1年生のときになぜか作曲しているんです。「スライムの歌」っていう曲で、全然意識していないんだけど3,4,5拍子が混ざっている不思議な曲。

あとはよく歌っていました。子供の頃の写真とか歌っている写真は沢山あって、音楽は身近だったと思います。

會本 結局自分にとって「近い」、「親しい」ことしか描けないと思っているんです。例えば、なんとなく女の子達の群像を描いたら、どの人もみんな友達の誰かにいつのまにか似ていたりして。後から気がついて可笑しかったです。

あと、描き方が即興的というか下書きをあまりしません。もちろん仕事上することはありますが、いいテンションでできたものがやっぱり一番じゃないですか。1回で描く、1回目でダメだったらポイ!と捨ててしまう感じです。音楽もそういうところありますよね。

平本 その感覚はわかります。僕の場合ですが、作曲をしていて曲の途中でアイディアが止まってしまったらその曲はそれ以上進めないで、ポイ!と捨ててしまいます。

作曲家もいろいろなパターンがありますから、1回寝かせて少し経ってからまた考えるという人もいますが、僕の場合は1回で完成まで持って行けなかったら曲の種自体にパワーがないのかなと判断するんです。

曲を作る上での危険信号みたいなものがあって、作り始めて1週間しても完成しない時は危ないなと感じる。1週間を超えるとテンションが変わってしまいますし、いい曲なら短時間で完成するはずですから。

會本 私はアイディアが止まってしまったら、いったん寝かせるのはしますよ。というか、結果的にそうなったりなだけですが。何カ月、何年と放置していて、後で見たらよくて少し足して完成にしたという経験もありますが、でも、それも久しぶりに見てみてのひらめきだから。練りに練って描くということはないですね。そこは一緒です。

平本 時間をかければすごくいいものが出来るというわけではないですよね。時間よりはテンションの方が作品には大きいと思っているんです。そのテンションがスピードも持ち合わせているはずで。

會本 そうですね。迷いがない強い作品になりますよね。試作を重ねたんだけど、一番最初に描いたのが一番よかった、というのもよくあります。小さいものやちょっとしたイメージの素材をいっぱい描いてみて、その中で、もっと深めていけそうなものを進めていく感じです。

色鉛筆や鉛筆の作品に関しては結構さっと描いて、完成が早いですね。締め切りの関係もありますが、1週間以内には完成しますし、細かい絵でも描くこと自体は3日くらいです。

平本 それは早いですね。

1 2 3 4 5