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東京を巡る対談 月一更新

月船さらら(女優)× 平本正宏 対談 リズムを飛び越えた雑多な街、その或る姿

 

<『metro』の今後については・・・>

平本 『metro』を3年間やってきて、節目を感じたりはしますか。

 

月船 それはあまりないですね。と言うのも、毎回ちょっとずつ形態が違うから。次回作は、相棒の出口がいなくなって初めての公演になるし、前回の「痴人の愛」で演者として舞台に立ったのは、私ひとりだったし。最初に遡って、「陰獣」では、出口と私の2人とゲストの役者さん達ががっつり対等に演技をしたのに対し、2作目の「妹と油揚」ではゲストさん達に大暴れしてもらって、そのなかで私たちがどう居場所をつくるかというスタンスで演じていましたからね。

平本 けれども、ユニットの形態が大きく変化したという意味での節目は感じたんじゃないですか。

月船 それは確かにありますね。ひとりでどうやって行けばいいのかとか、新しい『metro』をどういう形にしたらいいのかとか、全然わからなくって。だから、時間が経つのを待つしかなかった。相棒が辞めると言ってから1年近くの期間を過ごすことで、やっと答えが出たかなぁって感じ。

    で、いまはスッキリしてます。

平本 新しいメンバーが『metro』に加入する可能性はあったりしますか。

月船 うーん、そういうことが今後あったとして、女優さんは入ってこないだろうな。感覚的にそう思います。プロデューサーとかスタッフ側として入ってくるのはあり得そうかなぁ。

平本 じゃあ、『metro』の制作陣をがらっと変えたりすることもありませんか?

月船 次回は照明家がいままでとは違う方なんですが、そういう、ひとりふたりの小さいチェンジはあるけど、全体を変えることはないでしょうね。『metro』の色合いって、結局、スタッフ陣込みのものだから、それをあえて変化させる必要は感じないですね。

    でも、劇場を違うところにするとか、変えられる部分は他にもあって、自分のなかで、公演ごとに3分の1ぐらいは色を変化させてきているなという実感があります。作風も、あんまり文学的にならないようにしたりとか、意識的に特定の色がつかないように揺さぶる努力もしているし。

    実は、当初10月公演に予定していた「岡本かの子」をやめて、新作を演ることにしたんです。震災が起きて心変わりしたからなんだけど、心境の変化に合わせて忠実に方向を変えられるのが『metro』の強み。表現って、本来は、世の中の流れや日々の生活に起きたことなどを受け入れて、柔軟に変容させていくべきものですよね。表現メディアのなかでも、写真とか平本さんのやっている音楽とかは、特にその柔軟さを持っている気がします。

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