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東京を巡る対談 月一更新

謝 依旻(囲碁棋士)×平本正宏 対談 何百手先が読めてもわからない勝敗



<バンジージャンプが必要なとき>

平本 囲碁って元に戻せないじゃないですか。そういう時は方向転換をするのでしょうか?

その局面で切り替えが出来る人は強いと思います。最初自分が良いと思ってて、気付いたら悪いなって言う場合もありますし、それで気持ちが一気に乱れて、どんどん無理したりとか。それで良い場合もあるんですけど、毎回そういうわけにもいかないので。

平本 あがいて良くなる時と、一歩引いた方が良い時がありそうですね。

本当にその時にならないと分からないですね。だから囲碁を止められないんですよね。

平本 本当に囲碁好きなんですね(笑)。

ですね。でも負け続けると嫌になりますけど(笑)。最近は負けが続いているのでいつ勝てるんだろうと思っていて。でもこの間やっと連敗が終わって。

平本 それはおめでとうございます。連敗はどれくらいだったんですか。

8連敗です。棋士人生初です。5月はすごく忙しかったですし、他のことを考える余裕が無いくらい負けていたので。でも今月連敗が終わって、少し気持ちが落ち着きました。

平本 負けたときは気分転換をされたりするのですか? 200メートルくらいのバンジージャンプをされたとお聞きしましたが。

そうなんですよ。飛びました。あれはすごかったです。正確に言うと233メートルなんですけど。

平本 ものすごい高さですね!! どこのバンジージャンプでしたっけ。

マカオです。映像もありますよ。後で見ますか?(笑)

平本 映像があるんですか!! ぜひ見せて下さい(笑)。webに載っていたあの写真を見ただけでウワーと思って(笑)。

今度一緒に飛びましょうか(笑)。そこのバンジージャンプはまっすぐに降りるんで楽しいですよ。さすがに233メートルは高かったです、当たり前ですけど(笑)。東京タワーの展望台から飛んだみたいな感じですね。一応何があっても大丈夫ですみたいなサインはしました。

平本 謝さんの飛び方がかなり格好良かったんです(笑)。



映像も係の人が撮ってくれるんですよ。写真も50枚くらい撮ってくれて。飛ぶ前の写真も、「ハー!」ってなってる写真が(笑)。説明聞いてる時が一番怖いですね。もう心臓が飛び出そうな感じですね。飛ぶ前は本当に考えましたよ、「さよならー」って。

平本 あはははは。

あと一応待ってる時に、今まで生きてきた中で悔いはあるのかなって考えたり。もちろんこれからやりたいことはあるんですけども、でも今までは全力で生きてきたのかなって、飛べるかなって感じて。

平本 前に見たその写真が、もうこのまま空をずっと飛んでいきそうな感じですごいなって思いましたね!

いやもう本当に叫んでましたよ。「キャー」みたいな感じでしたね。中には飛べない人もいるみたいですが、挑戦したいと思った人は大体飛べるんですよね。飛べない人は最初から上に行かないので。

平本 かなりの心構えを持って皆来ているということですよね。謝さんは、棋士として心機一転したかったのですよね。

そうですね、どうしても2014年の初対局の前に飛びたかったんです。どうしても。飛んでから、何か私いけるかもみたいな、本当に根拠の無い自信が出てきました。飛んで良かったです! 人生経験としてはオススメです(笑)。

何かしっかり頑張ろうというよりも、こんな怖いものでも乗り越えられたので頑張れる、絶対大丈夫みたいな。あと飛んだ時に目はつぶらないんですよ。なぜかって言うと、お金払ったから(笑)。

平本 確かに目つぶって、何も見ずに終わったら勿体ないですよね。

せっかくお金払ったし、景色を見よう!って。速すぎて景色全然分からなかったですけど(笑)、飛んでから、上から下まで5秒あるかないか程度なので。その日は風も結構すごかったですね。

平本 じゃあかなり怖い日だったんですね?

そうですね。髪型とかもすごいことになっていて。下に降りて、まず一番最初に髪型を直して(笑)。去年の5月くらいに友達と一緒に行って、友達が飛ぶ前に、飛んだ女性がすごく格好良かったんですよ。多分インドの方だと思うんですけど、中高生くらいの子供が2人いて、旦那さんと一緒に応援していて。その方なんと、後ろから飛んだんですよ。

平本 それはすごい! 映画みたいですね。

しかもすごく楽しそうに飛んでいたので、かっこいいと思って! あと結構観客が多いんですよね。展望台の中で「頑張って~」って応援してくれる人たちもいるので、いけちゃうかもみたいな。

平本 そのギャラリーが多いのもあって。いいなぁ。僕も心機一転するためにバンジーをやろうと思ったときには謝さんに必ずご相談しようと思います(笑)。でも、なんかやってみたいですね、本当に。

最後に「東京をイメージする場所」として神楽坂を選ばれた理由についてお聞きしたいと思います。





街も好きですね。あと、色々思い出があるところもありますね。私神社が好きなんですよ。10代の時からなんですけど、よく1人で行ったりとか。やっぱり落ち着くというか、神楽坂はなんだか落ち着きますね。

平本 なんか今日なんかも神社からここのカフェに行く間だけでも、かなりホッとするというか、のんびり出来る感じがありますよね。

神社好きというのはなんでですか。それは日本に来てからなんですか。

何となく落ち着くという感じですね。

平本 一番好きな神社というのはありますか。

んー、一番好きな神社、難しいですね。いろいろありますね。日本に来て一番最初に行った神社が、今日行った赤城神社だったんですよ。日本に来てまだそんなに観光とかしていない時に。最近は新しくなって前より綺麗になっていたんですけど、前のも好きでしたね。

平本 本当に思い入れのある神社なんですね。

今日は対談ありがとうございました!!

協力:押田華奈 氏


謝依旻 Hsieh Yi Min

囲碁女流棋士。日本棋院東京本院所属。
1989年台湾出身。黄孟正九段門下。
現在、女流名人、女流棋聖。
趣味はヒップホップダンス。

2004年14歳4ヶ月で入段(正棋士採用女流棋士最年少記録)。
2007年17歳11カ月史上最年少で女流本因坊のタイトルを奪取。
2008年18歳3カ月史上最年少で女流名人のタイトルを奪取。
2010年には女流棋士の中で初となる棋道賞優秀棋士賞を受賞。
2014年、女流名人7連覇を果たす。
獲得総タイトル数は18であり、女流棋士の中では最多である。

撮影:moco  http://www.moco-photo.com/

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