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東京を巡る対談 月一更新

Tekna TOKYO Cyclone 1 / 平本正宏「Tekna TOKYO Cyclone 1を終えて」

2)LOVE LOVE BANDをやってみての感想はどういうものですか。

そもそも「Tekna TOKYO」はジャンルにとらわれることなく、僕がいいと思う音楽を一番いい形で届ける場として作りました。「TOKYO nude」はノイズ/エレクトロニカ作品になりましたが、 かっこいいオーケストラが書けたらリリースしますし、そのほかロックだろうがポップだろうが、ジャンルに対するこだわりはありません。それで、TTC1をやるにあたって、そういった方向性を示しておきたかった。レーベルのファースト・イベントなので、「Tekna TOKYO」がどんなベクトルを持っているのかを、お客さんに伝えなくてはいけない。で、LOVE LOVE BANDを後ろにもってきて、ライブ開始前に荏開津広さんにDJをお願いすることにしました。荏開津さんにもできる限り「TOKYO nude」と違った音楽をお願いして。

LOVE LOVE BANDは、今年3月におこなわれたスターダンサーズ・バレエ団のダンス公演、「Love Love ROBOT 幸せのジャンキー」のために結成したバンドです。公演の振付家の遠藤康行さんに、昨年の8月に音楽を依頼され、それと同時にバンドでも参加できないかと相談されました。それで、信頼できる友人に声をかけて結成したバンドです。メンバー5人とも同じ芸大だったので、意思疎通がスムーズで、公演は大成功しました。

そのころ、同一メンバーで、篠山紀信さんのdigi+KISHINの新作「Team KISHIN From AKB48『窓からスカイツリーが見える』」の音楽も作っていました。その流れで、TTC1ではdigi+KISHINの音楽をLOVE LOVE BANDで演奏して、digi+KISHINの映像ともコラボレーションしてしまおうと。LOVE LOVE BANDは僕のメロディワークの実験室みたいなものです。歌とチェロとギターとキーボード/ピアノで、どこまで自分の電子音楽作品と向き合いながら面白いことができるか。普通のバンド演奏ではなく、音響的なプロセッシングを必ず入れるようにしましたが、そういう試みは続けていきたいですし、CDリリースもできると思っています。


3)ライブとアルバム、ふたつの形態で発表していらっしゃいますが、特性上それぞれ異なる点にフォーカスする必要があったかと思います。その各々の特徴を聞かせてください。

音楽的にはどちらも120%やる! っていう意味で変わらないんですが、CDは色々な音響環境で聴かれることを前提に調整しています。ヘッドフォン、ステレオはもちろん、もしかしたら「TOKYO nude」を使ったダンス作品が劇場で繰り広げられるかもしれない。今回は、そういったミクロ・システムからマクロ・システムまで対応できるように、マスタリングの段階で微調整をしてもらいました。マスタリング・エンジニアの森崎さんが素晴らしいかたで、「TOKYO nude」の魅力を、僕の想像していた以上に引き出してくれました。
だから、あのCDはどんな状況でも聴けるし、使えるようにできています。

ライブのほうは、会場によってシステムやキャパシティも違いますから、その場所で最大限いい音を作ることに専念します。ライブ前のPAチェックもそうですし、ライブ中も音量や響きは随分細かく確認しながら変更を加えています。
あと、なによりカッコよく体に響く音を作ることですね。僕は低音フェチではないですが、サブウーファーをうまく使うことも好きです。

4)パフォーマーとしてComputer Quartet (以下、CQ)とTTC1 というふたつのライブを実施されており、それぞれが異なるコンセプトのもとに構築されていますね。そのコンセプトの違いについて語ってもらえますか。

CQは「TOKYO nude」を作るまえから前提として考えていました。はじめから、CQありきのパフォーマンスだったんです。ただ、CQ自体はコンピュータで用意したサウンド・ファイルをMax/mspやAbleton Liveなどでいじっていくという定番のコンピュータ演奏。アンサンブルではなく、もっと演奏者に制約――サウンド・ファイルとタイム・ラインの限定――を与えて、そのなかでどれだけ楽曲を変化させられるか、それを考えていました。つまり、演奏という行為を、構築ではなく、破壊というアクションに重点を置き、全力を尽くすという形です。

TTC1では、映像とのコラボレーションを目指し、CQとは対になっています。映像と音楽を同期させているので、ライブでは変更不可能な箇所が多く、必然的に音響ダイナミクスとサウンド・ファイルのミックスが中心に据えられています。こちらはケーキのデコレーションに近いですね(笑)。クリームを塗ったスポンジがすでに用意されていて、トッピングでどういうケーキに仕上げるか想像していく感じ。

僕としては、CQとTTC1の要素を両方足したライブにこそ意味があると思っています。リアルタイムに映像を破壊していきながら、音も破壊していくような……そういう構築型のライブは、演奏の歴史でずっと試みられてきたことなので。

5)作曲家とパフォーマー、両面の立ち位置から見て、ライブを実施されたうえで、いま述べられたこと以外で、次期ステージでの新しいチャレンジの構想があれば、お聞かせください。

次のライブですが、実は「TOKYO nude」の手法には限界を感じてしまいまして(笑)、まったく新しいことができないかなと。もちろん「TOKYO nude」があったからこそ、そう思うようになったんですが。<movement>と<moment>の延長線上にあるけど、それとは違った音を探したい。いまは東京にあふれる情報やその量に目を向けていて、情報レベルで東京を見ていけないかと思っています。具体的なことを聞かれると困りますが(笑)。どんなライブになるかとか、どんな作品になるかわからないのですが、音も映像ももっとミクロな単位で磨きたいということをここでは回答とさせてください。

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