<感情の出口を決めてくれていない音楽『TOKYO nude』>
平本 今回の僕のCD『TOKYO nude』を聴かれて、どう感じられましたか。
月船 えーと、いい意味で「不親切」でした(笑)
平本 おぉ、それは初めて聞く感想だ(笑)
月船 何て言うか・・・、人って「親切」な曲を聴いちゃうんですよ、わかりやすい曲を。たとえば、恋愛するとして、恋しているときは「わーい、心地いい!」って気持ちを盛り上げてくれる曲を聴くし、失恋すると、確実に泣かせてくれる音楽を聴いたりするのが普通じゃない? ドラマでも、視聴者に泣いてほしい場面では、涙をそそる曲を掛ける。それって、わかりやすいですよね。
でも、平本さんのCDを聴くと、「考え」てしまうんです、自分が何を感じているかっていうことを。感覚的な言葉だけど、平本さんの音楽は、感情の出口を決めてくれていない音楽、なんですよ。
私は、わかりやすい音楽を聴いたとき、それに感情を惑わされることもあるのですが、平本さんの紡ぎ出す音楽はそういうものとは別の方向から響いてきてる。
今回の震災があって、前に進んでいるのか、後ろに下がっているのかがわからないような、ちょっとしたことで一喜一憂しやすい複雑な心境のときにCDを聴かせてもらって、いろんな感情を揺さぶられて、いいなぁって素直に思いました。
平本 たしかに、感情の答えが出ないような形には成っているかもしれない。何かの感情のベクトルを植えつけることはせずに、ただただ街の音を収録し、加工しているだけですから。シビアな視点から、あえて感情を入れないようにしています。