<「死」を見せること>
平本 『digi+KISHIN DVD 月船さらら』(篠山紀信撮影の映像作品)は重厚な不条理を見ているような感じでしたよね。
月船 この間、これを見直したんです。自画自賛だけど、いい作品だよね(笑)
平本 映像の最後で、月船さんに強烈な死が訪れる。そこに至るまでの流れが本当に素晴らしいですよ。
月船 死ぬって、生まれ変わることですよ。
平本 つまり、「生」に向かう過程を描いた映像なんだと思います。背景に東京という雑多な街があって、そこに流れている、その時点までに積もってきた時間が存在する。月船さららというひとりの表現者がそれらを全部吸収して立ち上がる。「生」の象徴としての「死」が滲み出ていた。
ひとりの人間がただ日常生活を送っているだけでは見えないものが、篠山さんのファインダを通して、最高の瞬間を配することで表出してくる。そこに、虚構とか現実とか、そんな言葉では片付けられない何かを感じました。しかも、そこにいるのは月船さららでなければならなかった。「死」を醸し出すためには、本当に最高の人材ですよ(笑)
月船 撮影はすべて東京でしたんです。篠山さんも私も、予定調和でない作品づくりから何が見えるかに興味があったので、あらかじめ決め事をしないで撮影に取りかかりました。撮影場所を決めるときも、「あ、このもんじゃ屋さんで撮りたい!」とか、「今、すごい突風だからグランド行って撮ったら面白いぞ!」みたいな。で、出来上がりを見たら、ひとつのテーマに収まりきらない不思議な力がこもった作品になってた。
DVDの少し前に出た写真集のタイトルは『FREE』。この2つの作品のなかでの月船さららはまさに自由ですよ。死ぬのも、生まれ変わるのも・・・。
とは言っても、現実世界では長生きするつもりですけどね(笑)
平本 もちろんです(笑) ギネスブックに載る最高齢の俳優になってもらわなくては。