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東京を巡る対談 月一更新

田中利樹(人工衛星研究者)×平本正宏 対談 宇宙が描き出す発想

<人間の意図を超える地球規模の実験>

平本 宇宙船になると、中に人が住むので、いかに人間的、いかに生活と密着させるかが想像つくんです。宇宙という特殊な空間のなかで、効率のいいかたちをいかに具現化していくか。人工衛星になると、そのものだけなので、打ち上げ後に人と接触点がないじゃないですか。そうなると予定の2014年に人工衛星を打ち上げたら、その後その人工衛星にどう接触していくか、ただ単にデータを収集するインターフェイスとして存在するのか、それともインタラクティブというか、地球上からなんらかのアプローチができて、その結果人工衛星の使い方を変化させることができるのか。そこはどうなのですか?

田中 そうですね。そういう意味では地球規模の壮大さがあった方が面白いと思っています。データのやり取りもいいですけど、自分たちの人工衛星が地球を回っている状況を俯瞰で見るのも面白いと思っていて。そういうこともできたら面白いと思っています。

だから多摩美でアートを作っている人もいるので、そういった人たちが発想してくれると面白いですね。

平本 打ち上がってからも1年くらいありますしね。

田中 想像だけでものを作ったりするのも難しいと思うので、打ち上げたあとでなくちゃわからなかったことで何かが生まれることも期待しています。

平本 ちなみに打ち上がった後に人工衛星に変更というか、カスタマイズすることはできるんでしょうか? リモートコントロールというか。

田中 一応少しは変えられます。人工衛星にカメラを搭載していて、いまのプログラムだと命令を送ると写真を撮るという感じですが、宇宙に行った後でこういう風に撮影したいなどのアイディアが出た場合は、プログラムを書き換えることができるようにはしています。衛星自身を好きに使える部分を盛り込んでいますね。あまり自由度がなさすぎるのも面白くないので。

平本 そうですよね。1年間もあると人工衛星との接し方も変わってくると思いますし、そういう変化って大切だったりしますよね。

1年の長さって年齢が重なるにつれ短くなりますよね。久しぶりって友達に会ったら1年ぶりだったとか最近結構あって、この年齢でそんなこと言っているんだから10年後はどうなっているんだと。で、日常生活を見てみると、そういう個人の時間の流れに対応させて、パソコンや車などのものを使っているなという印象があるんです。アプローチの仕方というか濃度が時に応じて変化していく。反対に、そういったところにアプローチができないと、ルーティン的になってただただこなすように使用されたり、持って行ってしまうと疎遠になったり。

それに加えて、デバイスのモバイル化が進んで、使用範囲が広がり、短時間化し、身近になっている。それが宇宙に対する接し方でもそうなると、より宇宙が身近になるのかなと前から思っていたんです、人工衛星も含めて。

田中 宇宙に対してのアプローチが身近になると接し方も当然変わると思います。それこそ宇宙旅行が一般的になれば、また変わると思います。

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