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東京を巡る対談 月一更新

中山寛子(スタイリスト)× 平本正宏 対談 あるスタイリストが「裸」に辿りつくまで



<山口百恵の自前セーラー服を濡らす>

平本 仕事の進めかたはどんな感じなんですか。

中山 資料を見て、電話で打ち合わせして……阿吽の呼吸で。

作業自体は孤独なものです。とは言っても、家からは出ますよ。「109」とかを歩きまわり、刺激のあるものを見て、閃きに結びつけます。流行りのものを見てパッと反応する気構えが必要なんですね。

平本 AKBのDVDの時も? 僕は今年(2011)の1月にAKBのDVDのためのサウンドトラックを作曲していて、彼女たちの服装がすごく好きだったんです。彼女たちを身近に感じると同時に、妙な艶やかさを感じる。


digi+KISHIN DVD 最新作 Team KISHIN From AKB48「窓からスカイツリーが見える」、スタイリングを中山氏、音楽を平本が担当した。

中山 この歳で10代の女の子たちとの仕事ですからね。何をしていいか分からないから、とりあえず3日くらいかけて109を見て、下北沢まで行ってみたりして……。

きっとステージ衣装をファンは見慣れているはずだから、普段着っぽいものがいいと思うんです。それは昔のアイドルの時から思い続けていること。

スカートが捲れるとか、ちょっとはだけるとか、普段着でスキが見えたときにセクシーさを感じるわけですから。その人のスキを見せてあげるようにする。

平本 去年、篠山さんの写真展(「山口百恵|篠山紀信」展、2009年11月27日〜翌年1月15日まで開催)で、山口百恵さんの写真を色々と眺めたときに、雨に濡れたセーラー服姿のものがありました。


山口百恵ベストアルバム「百恵復活」のジャケットにもなっている

中山 あ、あれね〜。いまの六本木ヒルズになっているところに篠山事務所があったんだけど、その隣のガソリンスタンドで、上からホースでジャージャー水をかけて……。

平本 その時は、最初から雨に濡らす予定で撮影に入ったんですか。

中山 どうだったかしら。記憶があやふや(笑)。

ちなみに、あの制服は彼女の自前だったんですよ。撮影日が9月の末で、学校では10月から衣替えでしょ? だから、雑誌が出る10月に夏服じゃおかしいっていうので、わざわざ彼女に冬服を持ってきてもらったの。

それで夕方に撮影が終わると、ズブ濡れのセーラー服を持って街のクリーニング屋に飛び込み、乾かしてプレスしてもらったんです。

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