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東京を巡る対談 月一更新

佐藤麻衣(タレント)× 平本正宏 対談 溢れ出す音/喧騒の台北、静寂の東京



<芸術学科で学んだこと>

平本 大学時代に環境音についての授業を受けたという話も伺ってますが。

佐藤 授業で、ジョン・ケージの音楽を聴かされて衝撃を受けました。こんなのも曲になるんだ、と思って。芸術作品で、枠にとらわれないものに初めて触れたというか。

平本 ジョン・ケージの「4分33秒」ですね。ピアニストが舞台に出てきて、ピアノの蓋を閉めて、何もしないでストップウォッチで4分33秒を計り、蓋を開けて帰るというのは、まさにそれですね。

佐藤 その授業もきっかけのひとつとなって、生きかたを枠にはめる必要がないんだと思いました。そのころ大学3年で、休学して台湾に行くことになったんですけど……だからちょうど枠から外れることをしはじめた時期ですね。

    それと、高校のときセミナーで、東京都の高校生300人ぐらいで大井埠頭から船に乗って上海へ行き、現地の学生たちと交流したり北京の万里の長城を見たりしたのも、枠からはみ出たことのひとつかもしれない。初めて海外の人たちと触れ合えて、衝撃的で面白かった。

    もともと大学の芸術学科にいて、卒業後はアート・マネジメントのほうへ進もうと漠然と思ってたんだけど、日本の社会の今後についてとか、いろんなことで頭を悩ませて、日本でずっと生活していくことはどうなんだろうと思っていたときに、たまたま台湾の番組のオーディションがあり、突然台湾へ行って……というふうにして今に至るんです。

平本 大学時代は芸術方面に進もうとされてたということなんですね。ちなみに、大学の芸術学科で学んだことで面白かったことはありますか。

佐藤 メディア概論とか面白かったなぁ。あんなことやこんなことや。現在ラジオのパーソナリティをやらせていただいてるんですが、もっとしっかり学んでおけばよかったなと思うこともたくさん。

    一方、私は演者なのに、知らなくていいことも学んでしまったことが多々あって。時々、矛盾やその他思うことが。うん。

    それはともかく、大学で学んだことが今の仕事の役に立っているというのは確かですね。

    あとはね、出身校が非常に音楽に力を入れていて、朝歌うことから始まって帰りのホームルームでまた3曲ほど歌って下校。高校からなんだけどね、秋にはオーケストラ伴奏でベートーヴェン第九を全校生徒で歌ったりね。

    ほかには自由研究の時間があったり。いろいろな可能性を広げてくれる学校でしたね。とにかく一日中、音楽と緑に囲まれていたの。で、大学でジョン・ケージに出会ったときはそれはそれは衝撃的で。

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