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東京を巡る対談 月一更新

佐藤麻衣(タレント)× 平本正宏 対談 溢れ出す音/喧騒の台北、静寂の東京



<空から見えた震災後の静かな街>

佐藤 今まで東京で訪れたところで、印象深い場所や考えさせられた場所はある?

平本 場所っていうんじゃないけど、団地が好きですね。多摩の団地を遠くから眺める。夕方まえぐらいの、部屋の灯りがポツポツポツポツと点いていくのを見て、いいなぁ、みんな生きてるなぁって、ジーンときて泣きそうになる(笑)。ちょっと団地フェチなところがあるんですよ。

佐藤 羽田から飛び立つときによく窓から街を見下ろしてるんだけど、震災のあと、東京の顔がほんっとに変わってしまったのを感じました。なんていうか、どんよりっていうか、悲しいような冷たいような顔をしてたの。そのときは、別に夜ではなくて、電気が点いてないとかでもなかったのに。

    ディズニーランドの駐車場が液状化で車もなく、港も閑散としてました。人が動いてないだけで、街ってこんなに変わるんだ、と思った。

平本 震災2週間後に、地震前とどう東京が変わったかを音で見てみようと思って、レコーダーを持って六本木や渋谷に繰り出して録ったんです。そしたら、どうなってたと思います? 人の音しかないんですよ。お店でかかってる曲とか、アナウンスとか、いろんな音が溢れ返って入り交じり、カオティックなノイズを生み出していたあの東京が、自粛ムードのなかで、人の歩く音と喋り声しか録れなくなっていた。車があまり走っていなかったというのもあるだろうけど。

    なんて静かな街なんだろう、そう思いました。灯りが夜に輝かないから、人の行動範囲も狭くなって、それがまた音を無くしていって、というふうに循環して……。

佐藤 たしかにあのときそうだったね。でも今はやっと少し戻ってきた。

平本 そう。で、気づいたのは、東京はほんとに音が過剰だったんだなぁと。

佐藤 渋谷へ行くと、宣伝カーとかも凄いからね〜。

平本 音を減らすだけで、街の景色は変わるということですね。

    3・11があったことで、無駄だった情報が見えてきた気がして、そのことに気づきはじめている人がほかにもいるんじゃないか。一方、うるささが活気だったりもしますが。

佐藤 日本人は控えめなところがあって、もっと自分を出していったほうがいいと思うんだよね。うるさすぎも困るけど。

平本 それはそう。うるさくしなくていいところで出て、ここで出ろというときは出ないこともしばしばあったりで。

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