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東京を巡る対談 月一更新

駒井知会(弁護士)×平本正宏 対談 人の人生を変えていく為の難民支援

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<問題だらけの日本の支援環境>

平本 イギリスの施設は日本とどのように違うのですか?

駒井 全く違います。たとえば、私たちが訪問したイギリスの施設では、外部の病院と遜色ない入院スペースがあり、24時間ナースがいて、医師も1年365日通ってきていました。あと、日本では現時点で全く認められていないことですが、被収容者の方々に、インターネットの使用や電子メールのやり取りが許可されていますし、携帯電話も持たせてもらえるんです。そのため、イギリスの被収容者の方々は、1日24時間自由に、外部と双方向の連絡を取ることが可能です。これが、どれだけ被収容者の方々のストレスを減らしていることか。また、これも日本にはない施設ですが、イギリスの施設には図書室があり、難民申請者の方々が国際難民法や出身国の情報を調べられるような書籍が揃えられています。収容されている難民申請者は、インターネットや双方向の電話連絡などで、自らの難民性を立証するための証拠を集めるための手段が与えられているのです。また、イギリスの施設では英語教室があったり、パソコン教室があったり、音楽室・図書室・美術室・調理室まであって、すごく生活のための施設が充実しています。

平本 レクリエーションが全然違いますね。

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駒井 そうです。被収容者の方々に、学習の機会も与えられているところも、感動しました。イギリスの収容施設の所長さんがおっしゃっていたのですが、被収容者の方々が、これからイギリスで暮らすとしても、祖国に戻るとしても、彼らが、どちらの国にこれから暮らす場合でも、その社会にとって役に立つ人間になってほしいというポリシーのもと施設が作られているということでしたから、根本の考え方が違いますね。

平本 逆になぜこれだけ処遇の面で差がある中で、彼らは日本で難民申請をしようとしているのでしょうか?素人目には少し不思議な印象です。これほどまでに認定されないことは国際社会的にも知られている事実でしょうし、敢えて日本を選ばなくてもと思うのですが。

駒井 ケース・バイ・ケースだと思いますけれども、イギリスまで行くのに、ブローカーに払う費用が高かったりして行けない場合がありますね。本当は、言葉の通じるイギリスやカナダに行きたかったのに、日本行きのビザが真っ先に手に入って、とにかくこのまま留まっているのは危ないから、日本に逃げよう!と決意して来てしまったケースもあります。日本では認定率が0.6パーセント前後であるのに対して、イギリスでは34パーセントくらい認定されているのにも関わらず・・・(2015年)。

平本 34%も認定されているのですか!

駒井 たとえば、ある難民認定申請者の場合、姉妹でそれぞれ日本とヨーロッパの某国にバラバラに逃げて、日本に逃れた姉は、5年以上難民認定されず、今も仮放免状態で仕事をすることすら許可されていない悲惨な状態なのに、妹は亡命先でさっさと難民認定を受けることが出来、今はその国の国籍を取得して、自由に生活しているということもあるようです。

平本 ヨーロッパの某国で国籍を取得した妹を頼って、姉が日本での申請をやめて、イギリスで申請するということは出来ないのですか?

駒井 もう一度イギリスで難民申請することは正直難しいですね。

平本 そうですか。日本でダメなら他の国で難民申請というわけにはいかないんですね。

駒井 そうですね。例外的な場合を除いて、日本に一度逃げてきて難民申請してしまうと…その意味で、日本に逃げてきた難民認定申請者に対する日本の責任は重い。ちなみに、昨年(2015年)で、ドイツの難民認定率は59%、アメリカ77%、カナダ68%と聞いています。少なくとも、先進国と言われている国の中で、日本の難民認定率は、間違いなく最低のラインでしょうね。

平本 日本の認定率の低さというのは、海外からも指摘されていますか?

駒井 あまり知られてないと思います。もっと海外の人達に日本の認定率の低さ、難民認定制度の実態等をレポートして、逆に、海外から問題点を指摘されるようになった方が良いと思います。今後、海外の学会などでも積極的に報告していこうと考えております。

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平本 知らないことが沢山です。もっともっと社会的にこの事実が認知されるようになれば、変わっていく部分もある気がします。知るということは経験として大きいですよね。知っていると知らないとでは、その後の関心や判断に大きな変化が出ます。知ることが重要だと思います。こういう事実があると知ることが。

駒井 そう思います。その意味で、今回、このような対談の機会を与えていただけて、大変感激しております。日本における難民・難民申請者の方々を巡る深刻な問題は、本当はまだまだ沢山あります。たとえば、難民としての保護を求める者たちに、事前の予告・連絡なく、裁判を受ける機会を奪ったまま無理矢理強制送還を繰り返している現在の運用など、極めて違法性が高いと疑われる入国管理局のやり方についても、既に訴訟が始まっておりますので、ぜひ、今後、注目していただけましたらと存じます。

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