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東京を巡る対談 月一更新

高橋久美子(作家・作詞家)× 平本正宏 対談 言葉と音楽が触れられるもの

<ハッピーすぎたら何も創れない、あるいはまどろみの時>

平本 大学入って、みんな7才ぐらいから作曲のレッスン受けていたりして、ビックリしたよ。それ自分で考えて、楽しいと思ってやったのだろうかって。それでは技術だけが先行しそうだなと。

高橋 それは途中で飽きてしまいそう。私もピアノを3才からやっていたけど、高校生で飽きてしまった。作曲は飽きませんか?

平本 飽きないねえ。詩を書くのはどうですか?

高橋 飽きないですね。

平本 何で飽きないのだろうね。

高橋 生活に根付いているからだと思う。いま、小説を書いていて、それは出版社の人と話し合いをしながら、締め切りがあったりして書いているのだけど、これは仕事という感覚で頑張らないととか、上手に書かないとという思いがすごくある。詩はその息抜きに書ける。小説を書いていてくたびれた時にまたいい詩が書けたりして。何か「闇」と密接な関係があるのかと思ったりもする。

平本 闇っていうのは?

高橋 ハッピーすぎたら何も創れないのと一緒で、小説など仕事と思っていたら楽しい時の方が書けると思うんだけど、詩の場合は闇と一緒にやって来るというか……。中学の時からこういう感じでやっていると思う。

平本 そうですね。割り切るというのは大事なことだと思う。仕事としてやるということ。仕事としての作曲と自分で作る曲というのは違いがあるけど、自分の曲の場合、試行錯誤して曲のことを考えるのが自分でもうっとうしいくらいにくっついてくる。

よく自分の生活は音楽だと誇らしげに言う人がいるけど、僕は音楽していない時は極力音楽を排除したいと思っているんだ。どこにいても根強く作曲がくっついてくるから。考えないようにしていても、いつの間にか音楽のことを考えていたり。それが不自由な時もあるから、なるべく日常生活からは離したいと思っている。

高橋 勝手にくっついてくるということですよね。離していてもタイミングが合ってしまうと出てきてしまう。寝ている時でも浮かんでしまったり。たまに夢の中で思い浮かびません?

平本 あるある。

高橋 朝起きたら忘れていたりしません?

平本 するする。

高橋 ヒャーってなるんですよね。

平本 一番嫌なのはまどろんで、ああもう寝るなあという時に「あっ、出た!」ってなること。

高橋 わかるわかる! そういう時起きます?

平本 無理矢理起きるよ。

高橋 天才やあ(笑)。私寝てしまうんです。


アプリでまどろみながら音楽を入力する様を実演中

平本 起きる時は携帯のアプリでキーボードを弾いて録音して寝る。実は今度自分の曲をアレンジしなくちゃいけないのだけど、そのアレンジ案はまどろんでいる時に出てきて寝ちゃった。

高橋 あら。

平本 でもちゃんと覚えていた。こういう経験は初めてだったな。よっぽど忘れちゃいけなかったんだからだと思う。

こういうことってあるでしょ?

高橋 あります、あります。最近は携帯を横に置いておいて、メモをパーッと書く。朝起きるときれいに忘れていて、メモしたことも忘れていて、ある日メモ帳を見たらすごくいいことが書いてある! 誰が書いたんだろうって(笑)。小さいおっちゃんが出てきて書いたのかなあと思うくらい。

平本 その頻度はどれくらい? 寝る直前に出てくるのは。

高橋 毎晩くらい。

平本 おおー!!

全然書かない日もあったりする?

高橋 あります。

平本 それでも寝る直前にコロッと出てきたりするの?

高橋 出てきます。何でだろう、寝る直前の時間っていうのは。

平本 本当なんなんだろうね。曲を作っていていいフレーズは出てきているんだけど展開がうまくいかない。それで一日中あれこれやったけどダメで、もう眠くなってきたなあというときにちょっと思い浮かんで意識も半分でピアノを弾いて録音して寝る。で、朝その録音を聴いてみると、これだ!っていうのは何度もあるよ。

高橋 何ででしょうね。寝る直前は覚醒しているのかな。不思議やね。

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