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東京を巡る対談 月一更新

高橋久美子(作家・作詞家)× 平本正宏 対談 言葉と音楽が触れられるもの

<そこに普通にあり続けるものを見つめて>

平本 今日の撮影場所は隅田川だったけど、いい場所だったね。今日川沿いを歩いて、音を聞いたり、清澄あたりを散策するとなんでこんないい場所を見過ごしていたんだろうと思った。隅田川を選んだ理由は?

高橋 きっかけはお母さんとお姉ちゃんが東京に来たときに一緒にこの辺りを観光したんです。松尾芭蕉記念館やのらくろ記念館などがあって。隅田川は花火大会もあるし、江戸っ子のイメージがあるんです。

川や木はずっとそこにあり続けるでしょう? だから隅田川あたりを歩いていると、江戸時代だったらこんな感じだったんじゃないかとか想像できるんです。いまは川沿いはビルになってしまっているけど、江戸、明治、大正、昭和と川はあり続けていたわけですから。

私は歴史が好きというか、ただそこにあり続けるものにすごく惹かれる。


隅田川の風景。すぐ近くには松尾芭蕉記念館もある。

平本 今日、橋のところに、橋の歴史みたいなものが書いてあったけど、数百年前の風景を想像するのってなかなかいいよね。

高橋 愛媛に樹齢2600年と3000年の木があるんですよ。3000年のは枯れちゃったんだけど、2600年のはまだ健在で。めっちゃでかい! でも屋久杉ほどは大きくなくて、普通の顔をしているかな(笑)。

隅田川もそうだけど、本当にすごいものって普通にしている。すごいってアピールするものはだいたい逆に普通だったり。自然はさりげなく、看板もないし。看板は人間がつけているわけだしね。

平本 そう言われると隅田川を見直すね(笑)。離れると大切さにすぐ気付くのに、身近なものは見過ごしているよね。

高橋 本当にそうです。

私が行きたいと思うのは下町の方が多いかも。この前個展をしていた経堂も下町感がすごいあったから。

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