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東京を巡る対談 月一更新

Tekna TOKYO Orchestra スペシャルトーク デジナマ吟醸『テクナオケ』のつくりかた

CDを出そうと思ったきっかけ

平本 昨年12月に「ブルックリンパーラー」でライブをさせてもらったときにすごくいい感触をしていたのが大きいです。

篠山さんの映像とのシンクロが気持ちよかったという部分も大きいと思いますが、エレクトロニクスとアコースティックのオーケストラが面白く発展していく可能性を感じたことが大きいかな。

関口 構想4カ月、実質の制作期間は作曲2カ月、レコーディングとミックス1カ月っていう感じだよね。

吉田 1日で6曲レコーディングっていうこともあって、かなり大変でしたよね(笑)。

それぞれの個人活動との違い、Tekna TOKYO Orchestraについて

関口 テクナオケでの活動で、表現の幅が広がったっていうのは強く感じた。エレクトロニクスと合わせること自体がはじめてだったから、チェロの入れ方をどうするかはかなり考えないといけなかったです。ただ、基本的にはチェロをどうこの世界観にはめ込んでいくかという作業なので、いつもと一緒といえばいつもと一緒です。

吉田 私も歌を歌って曲の世界観を作るという作業に関しては、関口さんと一緒でいつもと同じという意識でした。ただ、土台となる曲、メロディ、歌詞はあっても、それをどうバンドの演奏として作っていくかは、かなりインプロなんですよ、テクナオケって。そのインプロも普段のジャズの活動でやっているものとは違いますし。

曲自体が持っている雰囲気というか色をどうやったら出せるか悩んだ気がします。成長させてもらって感謝してますね(笑)。

中村 テクナオケでエレキギターを弾くということは、やっぱり自分の中では大きいと思います。今やっている他のバンドではエレキギターを弾くことはないので。あと、定期的にライブがある訳ではないので、みんなで集まるときの緩急というか、ライブ直前の集中力で完成に向かう感じは好きですね。ライブが終わったときに思いもしなかった展開、空気感になってよかったこともあったし、反対にこうしたらいいだろうと思っていたことがあまりうまく行かなかったり。そういうスリリングさがありますね。

平本 面白いのは、3人がこのテクナオケの活動以外でエレクトロニクスと一緒にやる機会がないことです。クリックを聞きながら演奏したり、リズムがノイズだったり、そういう状況での演奏をしていないから逆に新鮮な発想が得られるんじゃないかと思って。エレクトロニクスとはいつもやっているからこういう感じでしょ? みたいなのが一番つまらないですから。だから、最初にブルックリンパーラーでのライブがあってそこで試行錯誤して、1曲1曲の中でのそれぞれの楽器の立ち方、音の出し方を作っておいたことは大きいと思っています。いきなりアルバム作り、レコーディングだったらこんなに短期間では終わらないと思いますね。

関口 まあ、平本さんが僕らの潜在能力を引き出してくれたみたいな、そういうことでいいんじゃないでしょうかねえ(笑)。

アルバムの制作方法

平本 基本的には僕が3人の演奏をどうするかはあまり考えずにトラックメイクをして、その曲のコードと歌詞を3人に渡す、沙良ちゃんにはメロディを教えて、それで3人がどういう風に演奏していくかを考えてみんなで相談する、この流れで曲作りをしました。

ブルックリンパーラーでやったライブのリハーサルでこのやり方が確立したので、レコーディングもこの流れを踏襲した感じです。

関口 平本さんからの投げ方の度合いが曲によって違うんですよ。こういう感じっていうのがある程度あって、じゃあどうしようというのもあれば、どうするか何か考えてと任せられた曲もある。全部投げられたのだと「Time」ですね。あれはコンチクショーって思うくらいの投げ方で(笑)。

吉田 いや、全投げし過ぎでしょうー(笑)。

平本 ははは。あれはレコーディングの直前まで他の曲と同じようにメロディ考えて、歌詞考えてってやっていたんだけど、なんかつまらなくて。で、他の曲とは作り方の違ったものにしよう、メンバーからのアプローチも変えてしまおうと思ったのがきっかけです。

関口 逆に「Voyager」とかかなり初期の段階からやることが決まっていたよね。たぶん昨年の8月とか、活動をし始めるくらいの時期にすでにチェロのフレーズが決まっていましたから。

中村 ギターに関して言えば、エレキギターを演奏している曲のギターパートはほぼ自分で考えた気がする。「FREE FOR ALL」はライブとは全然違ったアプローチをしたし、「open s.o.s」もリフ、エフェクト共にかなり考えました。各曲で自分が何をするかというときにアコースティックギター、エレキギター、アコーディオンと選択する楽器の幅があったことも大きい気がします。1人で宅録だったので、とことんまで音色を作り込んだり、レコーディングのテイクを重ねることができる点もよかったですね。

ずっと1人での録音だったので、全員でレコーディングした「You and the Cello」や「With You」は居場所が探しやすくて、自分の音作りも楽だった気がします。

吉田 基本的にはどうするか自分が考えてやっているんですけど、トラック、チェロ、ギターとすでに土台がある中でのレコーディングだったので、私はそこをどう泳いでいくかみたいなことを考えて音作りしています。自分で曲を引っ張ろうという気はなかったですね。

平本 沙良ちゃんは「clenched tomorrow」のラップはどうだったの?

吉田 あれは大変でしたよ(笑)。雰囲気とかそういう以前に音程とか口回しとか。上下2つ録りましたし。

トラックメイクで使用した機材は?

平本 ほとんどの音はKORG TRITON pro、MS2000、ES1、KAOSS PAD3、Roland FP-7Fで作りました。曲作りはavid Protools、ableton live、ソフトシンセとプラグインはVienna Instrument、Ivory、Waves Gold、Protools内蔵のプラグインです。ずっとシンセサイザーを使って作曲してきたので、フィルターとEQさえあればかなり細かいところまで音作りができますね。ストリングサウンドや今回のアルバムでよく使ったチェレスタの音はVienna Instrumentで統一していますが、逆にキックやスネアなどリズムトラックは色々な作り方をしているので曲によって全部違います。ピアノは実は生音は1つもなくてIvoryとRoland FP-7Fのプリセットです。あと、ノイズやエレクトロニクス・サウンドはableton liveで作ったものがほとんどですね。

作曲した段階ではMacbook Pro 2.8GHz Intel Core 2 DuoのProtools M-Poweredで作業を行っていたのですが、ラフミックスはMacbook Pro 2.4GHz Intel Core i7のProtools 10で行いました。


(上:KORG MS2000 下:KORG TRITON pro)

それぞれの使用機材はどのようなものだったのでしょうか?

吉田 ライブではKAOSS PAD3を使って歌いながら自分の声にモジュレーションをかけていきますが、今回はエフェクト関係はミックスの段階ですべて行ったのでレコーディングではAUDIX OM31本です。

関口 チェロとYAMAHAのサイレントチェロの2つでレコーディングしました。チェロは100年くらい前のチェコ製を使っていてレコーディングはRODEのコンデンサーマイク NT-2Aで、サイレントチェロはラインで録ってProtoolsのプラグインやableton live、KORG KAOSS PAD3で加工しています。ライブではサイレントチェロとKAOSS PAD3を使ったことがないので、今後どう展開していくか楽しみですね。

中村 アコースティックギターはMartin DMで、RODE NT2000をLogic Proに繋いでレコーディングしています。このレコーディング方法はアコーディオンも同じです。エレキギターはオーディオインターフェイス経由でLogic proにつなぎ、プラグインで加工しています。全曲LimiterとEQで整えて、その他Noise gate、アンプシミュレーター、Fuzz、Delay、Overdrive、Tremoloなどで加工していきました。

アコースティック、エレキギター+ラップトップの2つはライブでも使ってきましたが、アコーディオンはテクナオケで使用したことがないですね。

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