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東京を巡る対談 月一更新

中嶋一貴(レーシングドライバー)× 平本正宏 対談 レースが奏でる<音楽>を聴く

中嶋一貴(レーシングドライバー)×平本正宏 対談

収録日:2012年3月13日

収録地:品川

対談場所:品川プリンスホテル

撮影:moco

<レースに欠かせない音の役割>

平本 中嶋さんと僕、たぶん1歳違いだと思うんです。

中嶋 85年の1月生まれ、早生まれです。

平本 84年生まれの学年ですよね。僕は83年の4月生まれなので、同年代という親近感があります。

中嶋 いいですね。聴いてきたもの、流行っていたものが同じですね。

平本 共通した体験が結構多いんじゃないかと思います。だいたい同じような年月を生きてきて、中嶋さんはレーシングドライバーになられたわけですね。

今日は中嶋さんと音楽の話、音の話をしたいと思います。

僕は街の音を時々録っているのですが、これが意外と面白いんです。録り始める前はそんなものつまらないと思っていました。車や人の声、宣伝のアナウンスなどどういう音が鳴っているか大体想像つきますから、どこでも同じなのではないかと。でも、街自体の構造が場所によって違うので、響きも街によって変わってくるんです。着目するポイントを少し変えるだけで新しい音に出会える可能性を知りました。

僕が音楽と接する中で一番興味があることは、聴いたことがない音を聴きたいということです。人が聴いたことがなく、自分も聴いたことのない音にものすごく興味があり、採取もしたいです。

時速300キロ、400キロという世界にいる中嶋さんは、僕が聴いたこともない音を聴いていると思います。スピードの中で体感する音、振動、エンジン自体が発する大音響。特にあのエンジンの音はすごいですよね。

中嶋 そうですね。確かに音を小さくしようと思えば出来るのでしょうけど、結局速く走るために一番いいところに持っていくとああいう音になるという感じです。

平本 観客として聞いているだけでもすさまじい迫力の音が鳴っていて、それを実際にものすごいスピードの中で走っているわけですから、レーシングドライバー、特に世界トップレベルのスピードで走っている人がどういう音や振動の感覚を持っているか、興味があります。

中嶋 音は運転している側にもすごく大事で、結果として一番速く走るために突き詰めて作られたものにずっと乗っているわけです。もし何かトラブルがあれば音もおかしくなります。車の一番いい状態、僕は細かいほんのちょっとの音ですべての状態までは分かるとは思っていませんが、明らかに部品が壊れれば音は変わってきます。

あと、運転というのはすごくリズムが大事なんです。エンジンも自分のアクセルの踏み方で音の上がり方も違ってくるし、例えばギアを上げ下げすることで音も変わるわけです。そういうリズムというのはすごく大事で、リズムを上手く掴めるか掴めないかで本当に早く走れるか走れないかが決まってくる。

こういった2つの意味で音は重要だと思っています。正常に走っているかどうかの判断基準としての音、自分が速く走るための指標としての音。

平本 それは運転している時は、この2つを聴いているという感じでしょうか。

中嶋 そうですね。音の種類としては同じです。エンジンからくる音が一番大きくて、その他、タイヤがすべる音、タイヤから出る音、ギアを変える時に金属がガチャッとあたる音など。それをクルマの状態と走る指標とに聴き分けているんですね。ギアの音は機械がちゃんと動いていると判断する指標になりますから。

ギアを変える時は、エンジン全開で走るところから一瞬だけエンジンを抜いて、また戻してそれに合わせてギアを変えてと、一瞬の時間なのですがそのタイミングが合っていないとタイムもロスするし、そういったところの音や振動も含めて、基準にして考えているところはありますね。

平本 レース中に車と自分のやり取りを、音を使って行っているような感じですね。

中嶋 音を指定しているという感覚ですね。

運転をしながら五感を使って走っている。もちろん視覚が一番ですが、次は音を聴く聴覚ですね。すべる感覚を感じているのはなんだろう、触覚なのかな。嗅覚も多少、おかしい時は匂いが出たりもするので。

あと、味覚はあまりないけど、ドリンクは飲みますね(笑)。

ほぼ、味覚以外の4つの感覚を使って走っています。その中での音の割合というのは、意外と大きいのではないかと思います。外から見るよりも。

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