佐藤麻衣(タレント)× 平本正宏 対談
収録日:2011年7月12日
収録地:東京タワー(大江戸線・赤羽橋口徒歩5分)
対談場所:スカイラウンジ ステラガーデン(ザ・プリンス パークタワー33F)
撮影:moco
<溢れ返る生活音・街の音>
平本 6月30日に六本木のSuperDeluxeでライブをしました。急遽、見に来ていただいて、ありがとうございました。
佐藤 突然のお誘いで第1部(“TOKYO nude”audiovisual piece)は間に合わず、第2部(Live digi+KISHIN sound)から見せてもらいました。
何が出てくるかも知らずに聴きに行って、バンドのチェロの音とかが美しいなと思ったのと同時に、ノイズ音が入ってきて……。ノイズ音が入ると、心地良くなるのか悪くなるのか、どうなんだろうと思う部分があったんですけど、すっかり溶けこんでて心地良くなりました。
平本 ノイズ・ミュージックをやり始めるようになって10年ぐらいになるんですが、ノイズにあまり接したことのない人は、違和感を持っていることが多いです。うるさいし、わからないし、というふうに騒音として捉えられる。ですが、聴かせかたを工夫すれば、はじめての人にも抵抗無く楽しんで聴いてもらえると思っています。
佐藤 心地良かったですよ、まさに。生活のなかに溢れている音は、騒音と思っちゃえば騒音だけど……。
平本 冷蔵庫だって、自販機だって鳴ってるし。
佐藤 冷蔵庫の音が気になって眠れなかったりする日があります。あと、テレビの電磁波? か何かの音が、電源消してるのに音が鳴ってて、それが気になるときもある。
そういった生活の音って、耳を澄ませたら、キリがないほどあるよね。
平本 人間の耳って、いらない音を自動的に消去してて、聴きたいところだけ聴く。けれど、いまこの対談の音声を録っているレコーダーだと、この場の音を全部拾い集めます。だから、レコーダーで街の音を録ってあとで聴いてみたら、街中がノイズの固まりだとわかるんです。
佐藤 たしかにそうかもしれない。私は10年前からアジアのさまざまな国に行ってるんだけど、東京って他の国に比べたら静かなんですよ! 台北はいろんな音に溢れてるし、さらに上海はもっと騒がしい(笑)。
だから、仕事が忙しかったり、いろんなことがあって精神的に安定してなかったときには、台北で聴こえる音が耳障りだったこともあります。だけれども、心が安定してると、逆に心地良かったり、懐かしく感じられる。
でも、東京の家で、夜寝ようとすると、自分の鼓動が聴こえてくる。あと耳鳴りも。それって台北じゃありえないの。台北は、夜でもワサワサした音が響いてて、それが原因で不眠症になったこともあるくらいです。
平本 えー、そんなにうるさいとは! それって、分析するとしたら、何の音がうるさく感じられるんですか?
佐藤 それが全然わからないの。何かがザワザワザワザワしていて、しーんという静けさがない。だから、東京に帰ってきて最初の夜は、全身が安らぐというか、耳が気持ちいいんです。
平本 村上祐資さんとの対談のときに伺ったんですが、宇宙ステーションのなかで一番ストレスになるのは、空調などの機械音らしいです。それぐらい音には強烈な側面があるということ。
佐藤 それに音は、慣れるものと慣れないものにはっきり分かれますね。
土地ごとに特有の音がありますが、たとえば上海の朝だったら、朝ごはん屋さんの肉まんを蒸す蒸籠の音だとか、その店に来るお客さんの声だとか、クラクションだとか、朝から騒がしい。ほかに、汽笛の音、工事の音、などが響いてて、活気がある。
平本 東京ですら、うるさいと思ってたのに、それ以上の街があるんだなぁ。
佐藤 東京は静かだよ〜。
平本 (笑)。
佐藤 ほんとに。是非、1回は台北でも上海でもいいから来てほしい。