平本 今回、東京タワーを「自分のなかの東京」として選んだのはなぜですか。
佐藤 台湾での仕事の都合上、1年に2回ほどしか帰ってこられない時期もありました。当時は成田からだったから、高速をひたすら走り、お台場の灯りが見えてきて、レインボーブリッジを渡って、遠くに東京タワーが見えはじめて、ようやく、あ〜〜!! 帰ってきた! と実感するんです。それで首都高の車のなかから東京タワーの横を通るときに必ず写真を撮って、ブログにアップして、そして家に帰っていました。
で、1週間くらいしたらまたすぐとんぼ返りしなきゃいけなくて、やっぱり寂しい気持ちがあって。空港へ向かう同じ高速を通ると、そこにはまた東京タワーがあるから、「行ってきます」と心のなかで言って台湾へ向かうようになっていました。
それと、帰ってくるたびに、東京タワーの顔が違うんですね。四季や天気や自分のメンタル面の反映が理由でもあるんだろうけど、タワーが悲しそうに見えたり、元気そうに見えたり、とかね。春なら、桜でタワーの足元がピンクになる。台湾は四季がはっきり分かれていないからか、余計に日本って四季に溢れているなと感じます。秋は黄色で、紅で……。日本のそういうところが、いいなぁって。
また、イルミネーションもいろいろ変化しますよね。バレンタインにはハート形になったり……そういうのが好き。
平本 東京に帰ってきて、最初に見るものということですかね。
佐藤 うん、東京に帰ってきたことをいちばん実感させてくれるものですね。
台湾には「台北101」っていう高いビルがあるんですが、それを東京から戻って家の窓から見ると、今度は逆に「あぁ、台北に帰ってきた」って思う(笑)。
平本 そっか、東京と台北のふたつの街のシンボルが、「帰る」と「行く」の二律背反する心の動きを表してくれてるんですね。
佐藤 なんでなんだろうね〜。その101は、イベントや曜日ごとに色が変わるから、それを見るのが楽しい。文字が出たり、ハートも出たりもします。
で、上海に行くと、またタワーがあって、それも面白い(笑)。
平本 やっぱり高いものに目が行くようですねぇ。
佐藤 あと、スカイツリーもいいんだけど、東京タワーの黄色い、あったかい光が好きです。でも、まだ登ったことはないの。101は登ったことありますが。
101は、一番上まで行き、街を見下ろすと、その街の中にたくさんの応援してくれる人がいて、支えてくれて……って、感謝の気持ちを思い起こさせてくれる場所なんだよね。
平本 篠山紀信さんは、東京をテーマにヌードを撮りつづけて50年にもなるのに、いくら撮っても撮っても、撮りたりないといつも言ってて、それは凄いと思います。僕の場合、そういう気持ちを、レコーダーを持って街を歩きまわっているだけだと、ときどき見失うことがある。そういうとき、高いところから街を見下ろすと、まだ録りたりないなと思う場所が見つかる。
佐藤 あぁ、あの辺はなんだろう、とか。
平本 そうそう、俯瞰してみることで見つかるものは多い。東京は大きくて、しかも変化し続けていくのがいいんですよ。