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東京を巡る対談 月一更新

駒井知会(弁護士)×平本正宏 対談 人の人生を変えていく為の難民支援

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<色々な世界を知ることで奥行きのあるオペラを作りたい>

駒井 ところで、平本さんはどういった音楽を目指しているんですか?

平本 先駆的な音楽を作り続けたいと思っています

駒井 先日、『TOKYO nude』を拝聴しました。平本さんにとって東京は、他の国の諸都市とも比べられない場所、日本においても他には無い場所というイメージですか?

平本 ありがとうございます。生まれ育った場所ということはありますが、特別な場所という認識はあまり持っていないです。ただ、これは実は変化して来た感覚です。最初は絶対に東京という唯一無二の都市に対するこだわりがありました。東京から新しい音楽を発信していきたいという意識から音楽レーベルも始めましたから。

でも、仕事をしていくうちに色々な場所を移動するようになり、自分の居場所がロストする感覚を味わったのです。自分はどこにいるときに自分なんだろうと、でもそうなるとそうでないところにいる自分は非日常になってしまう、でも実際はそんな感覚でもない。そうなると居場所ではなく、どこに行っても変わらず自分ができることだったり、することに目が向くようになりました。それで、こういう認識になりました。

あと、2年前にモスクワに行った経験も大きかったですね。日本で、東京で作った映画をモスクワ映画祭に出品して、映画祭の審査員から評価をもらえる場に居合わせることができた。しかも、審査員や批評家に音楽がよかったと言って頂き、すごく嬉しかったんです。東京から持ってきた音楽でも、良いものは良いと言ってくれるという体験。彼らは別に日本や東京の作品だから評価した訳でも、ヨーロッパの作品じゃないから評価した訳でも無い訳ですから、ああ、場所は関係ないんだと肌で感じることができました。逆に、東京からもっともっとガンガン発信していこうという意欲にもなりました。

駒井 住んでいる国自体はあまり関係がなく、クオリティによりけりということが分かったら、なおさらですよね。

平本 そうですね。駒井さんのお話を伺いながら感じましたが、弁護士の仕事で難民問題以外にも色々なことを同時にされていて。それは作曲の状況にも似ていると思うんです。作曲もいつも同じことばかりではありません。ピアノだけの曲を作ることもあれば、コンピューターの音楽を作ることもあります。悲しい曲を作るときもあれば、すごいポップな楽しい曲を作る時もある。

でも、やる範囲が多岐に渡れば渡るほど、相乗効果で色々なアイディアが浮かんできて、作曲が進んだり、すごくいい曲が書けるんです。一つのことだけジッとやるのが合っている人もいると思いますが、僕は反対で範囲が広がったり、自分では考えなかったようなことを要求された方が面白いことが起きるんです。

駒井 それは絶対にあると思います。懐の深い曲、豊かな曲を作ることができると思いますね。

平本 とにかく知らない世界、知らないジャンルに飛び込んでみたいです。それこそ音楽だけではなく、他の分野の世界ものぞいてみたいというのはあります。

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