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東京を巡る対談 月一更新

幸村誠(漫画家)×平本正宏 対談 『2001年宇宙の旅』から12年経って

<好きなラジオ番組を録音して何度も聴く>

平本 ちょっと話を変えまして、音楽は普段聴かれますか?

幸村 若い頃はYMO、坂本龍一はよく聴いていました。あとユニコーン好きでしたね。僕が好きになった頃に解散しちゃったんですが。最近だと、神聖かまってちゃんの不思議な魅力は気になっています。世の中色々な人がいるもんだなと思って。

平本 作業のときは音楽聴かれたりするんですか?

幸村 アニメの主題歌とか聴きますね。元気になるような、テンションが上がるような曲を選んで聴きます。歌いながら原稿描いたりしますから、『北斗の拳』のオープニングとか(笑)。

平本 それはテンション上がりますね(笑)。僕は職業柄音楽聴きながら作業できないんですよね。

幸村 そうですよね。音楽聴きながら音楽作るわけにはいきませんよね。

平本 ええ。静かなところで作業はされない? いつも音楽を聴いている状態ですか?

幸村 音楽を聴いていないときはラジオの録音を聴いています。ずっと定期的に録音しているラジオ番組がありまして、TBSラジオ『ジャンク』っていう番組なんですが、その月曜日のパーソナリティが伊集院光さんで、これが面白いんです。ゲラゲラ笑いながら聴いています。10数年のジャンクの録音が全部揃っているので、カセットテープの録音をデジタル化してそのデータからずっと順番に聴いているんです。1996年から録ってある録音を現代まで聴ききると、また最初の頃の録音が新鮮になって、いつまでも楽しめるんですね。約1000回分、各回2時間の膨大な量なのですが、僕とスタッフは8年間の『ヴィンランド・サガ』の作業の中ですでに3周くらいしています(笑)。

平本 2年半で1周となると、毎回新鮮ですよね。

幸村 そうなんです。特にその中でも替え歌とかは好きだったなあ。

平本 相当好きですね(笑)。

幸村 もう完全にオタクです(笑)。

平本 最後に今日撮影に選ばれた池袋のジャンクションについて教えてください。

幸村 あの見上げる複雑で巨大な構造、よくあれだけの空間を利用して、ビルの方が先に建ったんでしょうけど、東京だからこそあんなものを作れるんでしょうね。土地がないからわずかなスペースでも生かしていかなくてはならない、で建築技術が発達している、そういうところじゃないとあの空間は生まれないんだと思います。

本当に首都高速っていうのは乗っていてビックリしますよね、すぐそこにビルがあるようなところを空を飛んでいるようにバーンとなっていて、ジェットコースターのように右へ左へ上がったり下がったり。子供が生まれるまでは、オートバイを運転していたんですが、よく意味もなく首都高速を走っていましたね。

平本 タルコフスキーの『惑星ソラリス』でも近未来の都市として首都高を走っているシーンが使われましたよね。

幸村 ビルの中の道の頭上を道が走っているのがすごいですよね。

平本 SF映画に出てくるチューブを車が走るイメージが首都高には重なるものがありますよね。なかなか描かれてきたような近未来の都市も出てきませんが。

幸村 ちょっと宙を浮いている車とかそろそろ出てきてもいいですよね。もう2013年ですし。

平本 そうですよ。映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー パート2』で描かれた未来は2012年の設定ですし。

幸村 ああ、過去になりましたか。

平本 そうなんです。映画『2001年宇宙の旅」では木星に行ける設定になっていましたし。

幸村 199X年、地球は核の炎に包まれたっていう話がありましたが、本当に包まれなくてよかったと思ったり。

平本 もう13年も前の話なんて信じられませんね。

幸村 友人の若杉公徳さんがそういう地球終末をきっかけにしたすごく面白いギャグ漫画『KAPPEI』を描いていますね。それはすごく面白いです。

平本 あはは。見てみます。

ちょっと最後の最後ですが、いま宇宙をテーマにオペラを作ろうとしていまして、2年後から3年後に上演できればと進めています。そのきっかけの一つが幸村さんの『プラネテス』でして、ぜひ作る過程でアドバイスを頂けたら、そしてそのオペラを観て頂けたらと思っていますので、宜しくお願い致します。

幸村 ぜひ!! 楽しみにしております。

平本 本日はありがとうございました!!



幸村誠 Makoto Yukimura

1976年生まれ。漫画家。
1999年週刊モーニングに「プラネテス」を不定期連載。
2005年から月刊アフタヌーンにて「ヴィンランド・サガ」を連載中。
三児の父。

撮影:moco  http://www.moco-photo.com/

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