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東京を巡る対談 月一更新

田中雅美(スポーツコメンテーター・シドニー五輪銅メダリスト)×平本正宏 対談 水の世界ーー重力からの解放

<楽しいことを追い求める喜び>

平本 海で泳ぐのはいかがですか?

田中 一度撮影でイルカと泳いだことがあって、それはもう超楽しかったです。私1人とイルカ達で泳いで。背びれにつかまって泳ぐんですけど、私自身が泳げるので下に潜って、一緒に顔を見合わせながら泳いだんです。そうするとどんどん下に潜って行くんですよ。それで、息が続かなくなって私が上がると、また遊ぼうという感じでイルカが戻ってきてくれる。完全に通じ合ってましたね。

平本 とても素敵ですね!!

田中 酸素が続く限り潜っていましたね。もうイルカに惚れていました(笑)。あれは楽しかったですね。

平本 気持ちが通じていたんですね、だからイルカがまた遊ぼうと来たんですね。

現在は水泳の経験を持って、色々なことをされているんですね。

田中 このお仕事自体が、同じことを繰り返すというよりは色々なジャンルを経験させて頂くことが多いので、本当に面白さと、あと難しさとあります。毎回現場が違ったり、話すことが違ったり、そういう大変さもありますが、刺激的ですね。

平本 将来の夢というか、されたいことありますか?

田中 うーん、探し中です。それこそ、見失うときがあって、昔は目標がオリンピックのメダルが絶対的な目標だったんですけど、同じくらいに熱意を持てるものを見つけるのは難しいと思っていて。やっぱり人生をかけていたわけですから。だから、いま夢とか目標を語る立場なんですけど、見当たらないっていうときがあってもいいんだよね、一緒に考えて行こうっていう立場に自分がいると思っています。でも、大事なことは、いまあることを一所懸命続けて行くこと、仕事や人を大事にして行けば、きっと自分の夢が見つかるよねって思うんです。

こういう時代ですから、色々な子供達がいますし、「全然したいことが分からない」と言う子供に、「じゃあ、何かしていて楽しいときはある?」と聞いて、「食べること」と答えてくれたら、「じゃあ料理や食に関係することかな」と伝えてみたり。楽しいことを追求するのも1つの手段かなと思って。

夢は願えば叶うんだということは、言うことは簡単ですけど、責任を持てるかというと、私は自分の夢が叶わなかった人間なので。でも、やってよかった、チャレンジしてよかったと思っていて、そこが自分が話せるところ。すごく努力して金メダルを取った人たちには、努力すれば願いは叶うと言って欲しいんですけど、私は違った境地があるかなと思って。

平本 それはとても、とても大切なことだと思います。田中さんが伝えてくれる言葉に、励まされたり、元気をもらう人が、子供だけじゃなく沢山いると思います。どんなことをしていても、分からなくなる瞬間や迷う瞬間、止まってしまう瞬間は必ず訪れて、そういうときにそうなってしまっている自分を肯定してくれることは、本当に大きい。

最後になりましたが、今日東京を感じる場所にモノレールを選ばれた理由を教えて下さい。

田中 私15歳から東京に出てきて、1人で下宿先に行くときにモノレールに乗って、これから始まるワクワクと不安が入り交じりながら、このコンクリートジャングルに潜って行ったっていうイメージがあって。それが、スイマーとしての原点でもあったりするので、あのときの気持ちをふと思い出すときがあるんですよね。

いま地方での仕事が多くて、その地方から帰ってきたときに、今度は感覚が変わって、帰ってきた感覚になるんです。少しずつ感覚が変わっていきました。

平本 じゃあ、最初の気持ちを思い出す場所であり、ホッとする場所であるんですね。

田中 そうですね。自分の変化を感じられる場所でもありますね。ここまで来たんだなと。18年経って、東京で一人暮らしできるようになったんだと思ったり。一度コラムでもテーマにしたくらいです。なんかビルが近くて、オフィスの中が見えたりするんですよね。そのときに、ここにいる一人一人にそれぞれの人生があるんだと考えたり、ここで恋愛も生まれているんだろうなと思ったり(笑)。

キツいときって、自分一人がキツいような感覚になるので、夜遅く帰ってきて、まだ働いている方達がいると、自分も頑張ろうと思えたりするんですよね。それはモノレールに乗って、よく思うことですね。モノレールだとよく外の景色見ますし。

平本 なるほど。これからもモノレールに乗って、色々な変化を感じるんでしょうね。

田中 感じると思いますね。

平本 本日はありがとうございました!!

 


田中雅美 Masami Tanaka

北海道生まれ。中央大学法学部卒業。7歳で本格的に水泳を始める。

1994年「日本選手権」100m・200m平泳ぎ二冠
1995年「日本選手権」100m平泳ぎで、日本記録を11年ぶりに更新。以後、14年間日本記録を保持し続けた。
1996年「アトランタ五輪」100m平泳ぎ・13位、200m平泳ぎ・5位

2000年「シドニー五輪」100m平泳ぎ・6位、200m平泳ぎ・7位、400mメドレーリレー・銅メダル
2004年「アテネ五輪」200m平泳ぎ・4位
2005年 現役引退

<現在出演中のレギュラー番組>
やじうまテレビ!(テレビ朝日) 元気請負人 木曜日   6:00-  8:00 ※2013年4月スタート

趣味Do楽 ビューティースイミング(Eテレ) 講師 火曜日 21:30-21:55 ※全9回シリーズ

U型テレビ(北海道文化放送) コメンテーター   金曜日 15:55-17:54

<水泳教室>
ミズノが主催する「ヴィクトリー・クリニック」や全国のティップネス各店舗等において、教室を開催。
子どもからマスターズまで、幅広い世代に、水泳の楽しさを伝えている。

<活動>
ミズノ・スイムアンバサダー
鎌倉女子大学スポーツアドバイザー
ティップネス・スイムアンバサダー
なんとかしなきゃ!プロジェクトメンバー
日本体育協会Sports Japan編集部会部会員

<契約>
ミズノ株式会社、株式会社ティップネス

<講演演題>
「オリンピックと私」「競技人生でつかんだもの」「メダリストの言葉からスポーツと健康を科学する」等

<著書>
BODY+REMAKE(ワニブックス)、きれいに速く泳げる田中雅美のスイミング(宝島社)

撮影:moco  http://www.moco-photo.com/

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