document

東京を巡る対談 月一更新

石川遼子(太陽研究者)×平本正宏 対談 いちばん身近な宇宙天体、太陽

<太陽の生き物としての寿命>

平本 どの星も生きているわけじゃないですか、当然その3ミリHzという音波も一定ではなく、基本振動を持ちながらも常に安定せずに振動しているわけですよね。そして、星は年も取りますから、きっとその音波も長期的に見たら変化していくはず。人間も年を取るにつれて、高周波が聞き取りづらくなって可聴範囲は狭くなりますので、音との関係性は変化しますし。

そういう太陽の老化を観測したりもできますか?

石川 太陽は後50億年生きると言われていますが、人間を見るとそのタイムスケールからはほんのちょっとですし、その点についてはセンシティビティーは無いと思いますが、一方で太陽は11年周期で黒点が増減するんですね。さっき映像で見たように、黒点があると活発な活動現象が起きたりするので地球に及ぼす影響は変わってきますね。太陽が生まれて50億年ですから、100億年のうちの11年ですから、ものすごく小さい瞬間ですが。

平本 それって人間の一生が80年だと換算したらどれくらいの時間に値するんですかね? なんとなく気になります。太陽も人も生命である以上、内部が持つリズムって何か共通項があるのかなといま一瞬思ったのですが。

石川 ちょっと計算してみます…。

人の一生を80年とすると、大体0.04秒くらいみたいです。

平本 たった0.04秒!

石川 ええ。そんな風に考えたことも無かったですけど、でも、そこに周期性があるって言うのは面白いですね。

平本 いやー、太陽面白いですね。人だと0.04秒で体内でどんな活動がされているんですかね、しかも周期的に。もしあったら知りたいですね。

石川 太陽の地球への影響はとても大きくて、宇宙天気予報というのがあるんですが、太陽が活発な活動をすると地球への影響が大きいと思われています。マウンダー極小期ってご存知ですか?

平本 マウンダー極小期? どういう期間なのですか?

石川 1600年から1700年にかけて、黒点のほとんどない時期があったんです。その時期はテムズ川が凍るなど、地球がとても寒冷化した時期だったんです。ただ、黒点が無くなったからといって、地球の温度を下げるほど太陽の温度が下がるかというとそういうわけではありません。黒点があるとフレアなど全体的に若干だけ太陽から出てくる光の量が増えるのですが、ただごくわずかです。なので正確な因果関係はわからないのですが、少なくとも太陽が元気がなくなると地球は寒くなっていたらしいと言われています。太陽にとって黒点がほとんどなかった時期ってとても珍しくて、その後のダルトン極小期という時期以外はなかったので。

太陽って11年周期で極性が反転するんです。太陽の北極と南極でその極性、つまり磁石のS極とN極が入れ替わります。そしてその極性がちょうどいれかわる時期に黒点が沢山出現します。なので、黒点の数も11年で増減します。

ちょうど2011年ごろからその極性の反転がはじまったのですが、最近我々のグループが発表した研究で、そのタイミングが北極と南極で違うということがわかりました。これは、マウンダー極小期の前の太陽の状態と似ているのではとも考えられて、なんらかの地球への影響もあるかもしれないと注目を浴びています。

平本 太陽研究が進むことは地球への理解に繋がるんでしょうね。なぜか、さっきから太陽を音楽に、地球を人に頭が譬えてしまっているんですが(笑)、でも、ある種の鏡的な存在である気がします。当たり前なものとして存在するけど、その詳細や物理的仕組みは結構わかっていない。でも、日常的に接していて、多大なる影響を及ぼすっていうのは。

いやー、単純に宇宙好きとして面白いですね。そのせいか、あまり音楽の話をしてませんね(笑)。

石川 あはは。でも嬉しいです。

1 2 3 4 5 6