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東京を巡る対談 月一更新

長尾健太郎(数学者)× 平本正宏 対談 シンプルな坂道を登る時、どちらを向くか

<寄り道しないように>

平本 今日、東京のイメージから長尾さんは池袋を選ばれましたが、その理由を聞かせてください。

長尾 20歳くらいまで、実家が池袋にありました。でも、幼稚園から大学まで、池袋駅から山手線に乗って通っていたので、街の記憶があまりない。特に小さい時は、家から駅までが風俗街だったから、寄り道しないようにと親に洗脳されていました(笑)。

で、20年も住んでいたのに池袋のことを何も知らないんだな、と引越してから初めて気づきました。引越してからは池袋に来る機会がぱたりとなくなり、僕にとってミステリアスな街という印象なんですね。

平本 不思議ですねぇ。普通、20年も住んでいれば庭みたくなってしまうものだけど。

住んでいた頃、近所を散策することもなかったですか。

長尾 なかったです。大学院で京都へ行って一人暮らしを始めたんですが、その時は街をぷらぷら散策してました。だから、むしろ京都の方が詳しいほどで。

京都は小さくて周りを山に囲まれていますが、それが衝撃でした。東京って、都心にいればそうそう山が見えないじゃないですか。山に囲まれているということに不思議な感覚を覚えましたね。道の先に山が見えるものだから、なんとなく衝動に駆られて、思いつきでしょっちゅう山まで行っていました。

実は東京を出るまでは自転車に乗れなかったんですが……。

平本 ええっ!?

長尾 京都って、自転車がないと生活できなくて、そのために練習したんですね。で、乗れるようになると楽しくて、ぐるぐるぐるぐる街を回っていました。

平本 京都に住んでいる友達が何人かいるんですが、京都の環境が良いのであまり出る気はないと聞きます。

長尾 創作活動、というか、ひとりで過ごすにはいいところですよ。

とにかく、東京の思い出というと、どうしても学校と結びつきますね。池袋はホームタウンだったけれども、お祭りがあって楽しかったとか、そういうことはないです。

平本 地元の小学校に行かなかったことも影響してそうですね。

長尾 それは大きい。成人式も小学校でやりましたし。

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