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東京を巡る対談 月一更新

幸村誠(漫画家)×平本正宏 対談 『2001年宇宙の旅』から12年経って

<最初の1コマができるとなんとか描ける>

幸村 僕若い頃は趣味もなくて、ネームを考えているときジッとボーッとしているんですよ。それで気づくと夜になっている。いま、子供がいて、家族がいて、本来ボーッとしなくちゃいけない時間に、子供の面倒見たりしなくちゃいけないんです。そうなると仕事にならないなと思うじゃないですか、ところが、それでいざ机に向かうと描けるんですよ。あんなに若い頃出なかったものが、いま出るなと。あれは子供に救われているんじゃないかと思うことがあります。

平本 気分転換ができているんでしょうね。

幸村 たぶん。どういう作用なのかわかりませんが、オムツ替えたり、公園の砂場で遊んで帰ってくると、何にもしていないはずなのに机に向かった瞬間に最初の1コマが描ける。

平本 最初の1コマができると描ける?

幸村 結構なんとかなりますね、出だしができると。

平本 それに通じることかもしれませんが、僕は将棋が好きで将棋の本とかを読んだりするのですが、棋士の羽生善治さんが著作かインタビューの中で、将棋を指すに当たって一番いい状態は対局が定期的にあって少し疲れている状態だとおっしゃっていたんです。そうすると変に力んだりせずに、その場その場を見て判断しやすくなるみたいで。それは感覚的にはわかるなあと思っているんです。

幸村 いま繋がったと思ったことがあって、僕の師匠の守村大先生がもう何十年も週刊の連載をされていて、先生は休むことをすごく嫌ったんです。何かの拍子に一カ月とか休みになると先生は本当にリスみたいに落ち着かなくなるんです。仕事しないでこんなに時間が経っちゃうと次の仕事がつらくなるっておっしゃるんです。ずっとずっと仕事をしていた方がいいと。

平本 波に乗ると言いますか、走るペースを守れるような感覚があるんでしょうね。

幸村 そうですね。週刊ですから、1週間のうち4日間お仕事をされて、残りの3日間はどうされているんですかとお聞きしたら、3日間も非常に忙しくレジャーをしたり家族のことをしたりで、いつ寝ていらっしゃるんだろうと思うんですけど、かえって調子がいいんですね。

平本 わかりますね。フリーランスで仕事をしているので、基本的にはお仕事は断らないんです。そうすると時期によってはあり得ないような重なり方をすることがあるんです。昨年末から今年のはじめに、3曲、4曲、15曲、3曲と間が1カ月半の間にそれぞれ違う仕事で曲を書かなくてはいけなかった。でも、そういうときの方が悩む時間もなく、一瞬で曲が思いつくんです。脳ミソが生み出すサイクルに乗っているような感じで。

幸村 ついこの前の原稿がそういう感じでしたね。常識的に考えたら間に合わないという時間でしたけど、なんとかなりました。

平本 結構なんとかなってしまうものなんですよね。

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