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東京を巡る対談 月一更新

石川遼子(太陽研究者)×平本正宏 対談 いちばん身近な宇宙天体、太陽

石川遼子(太陽研究者)×平本正宏 対談

収録日:2012年12月21日

収録地:井の頭公園

対談場所:ペパカフェ・フォレスト

撮影:moco

<ムービーで見た太陽の魅力>

平本 太陽に着目するっていうことは人間の生活の根幹を研究することだと思うんです。天動説にしろ、地動説にしろ、太陽と地球との関係ですよね、もちろん月の存在はありますが。太古の昔、人間が天文的な知識をそれほど獲得していなかったときでも、人は太陽を常に見つめていたわけですから、これほど地球と切っても切り離せない星はないと思います。歴史的に見ても人間の生活に及ぼした影響は大きいですし、太陽に支配されていたと言っても言い過ぎではない気がしています。

そこでズバリ、太陽を研究することはどういうことだと思いますか?(笑) もちろん、石川さんにとって。

石川 そうですね(笑)、最初に太陽を研究しようと思ったときは、そういった深淵たる人間と太陽の関係は実は何も考えていなくて、むしろ太陽のムービーを見たことがきっかけなんです。太陽ってとても近い天体なのでその動画の撮影が可能で、とてもダイナミックなんです。

太陽って天文分野では若干ニッチな…..。

太陽は常に我々と共にありますよね。「天体観測をしましょう」というときに、太陽をわざわざ観測しようと思う人はあまりいないですよね、黒点のスケッチとかしたことのある人はいると思いますが。宇宙の研究って言うとブラックホールやダークエネルギーとか遠い宇宙の研究が一般的で、そういうところからすると太陽はよく知られた天体なんだと思っていたんです。

でも、その太陽のムービーを見たときに「なにこれ!」って思うくらい、わけわからない動きや爆発現象が太陽の表面で起きていて、そのギャップに最初グッときたんです。

平本 その石川さんがグッと来た太陽の動きというのは、カオスな、複雑な面白さだったんですか、それとも想像しないような規則性があったのですか?

石川 複雑性ですね。想像を遥かに超えていたんです。太陽の絵を描くと大体みんな橙や赤一色で、割とのっぺりしているイメージを持っていますよね。それが違ったんです。当たり前だと思ったことがそうではなくて、加えて全然わけがわからなかったんです。そのムービーを見たのは大学の授業だったと思うんですけど、先生にドヤ顔で見せられたんですね、「面白いでしょ?」って。

ダイナミックな現象を見ることのできる天体って他になかなかないんですよ、太陽以外は。他の天体は遠くにあるのでほとんど止まっているように見えてときどき現象があるとその様子を見ることができるときもありますが、基本的にはそこまで観察できない。

で、そのムービーがあるので見ますか?

平本 見たい!見たい!

石川 口で説明するよりまずはお見せした方がいいですよね。

平本 あっ、MacBook Airですね。お仕事もMacでされるのですか?

石川 普段のデータ解析はLinuxを使います。Macはプレゼンなど資料をまとめるときに使っています。

(太陽の表面のムービーを拝見)

平本 なんですか、これは!! すごいですね。これはグッと来ますね!!

どうしてこういう放射の仕方を?

石川 それがなかなかわからないんですね、複雑で。

平本 ということはこの放射している仕組みですら結構難解ということですか?

石川 映像の中心に黒点がありまして、黒点って磁場なのでそれによってダイナミックな現象が起きているのだろうと推測はできます。ただ細かい現象やその構造はわかっていないですね。

これは「ひので」(注)という衛星から撮影したものなんですけど、大気圏外にいるので常に太陽を観測できるんです。地上で観測すると大気の揺らぎでもやもやしてしまい、こんなに細部まで見ることはできないんです。「ひので」ができてはじめてこういったダイナミックな動きを観測することができるようになりました。

(注)太陽観測衛星「ひので」日本・アメリカ・イギリスにより共同開発され、2006年9月に打ち上げられた。

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