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東京を巡る対談 月一更新

勅使河原加奈子(フードプランナー・通訳)×平本正宏 対談 習うより慣れろで学んだ料理と外国語

<フランス民族のオタク性>

平本 オタク文化っていうのは、秋葉原とかアニメばかり取り上げられていますけど、根本には民族的に持ち合わせているんでしょうね。

勅使河原 フランス人もオタク多いんですよ(笑)。だから私は絶対に日本酒をあっちで広めようと思ってて。お燗の文化をあっちに出そうという秘密会議を今してます(笑)。

平本 それは是非! 確かにお燗の深さはワインに通じるところがあると思います。

勅使河原 でも、あんなに蜂蜜が受け入れられるとは思いませんでした。立ち上げたのが、2000年とか2001年とかだったんですが、今は全国で8店舗あるかな。

荻窪に本店がありますね、「ラベイエ」っていうお店で。

平本 あっ、知ってます!

勅使河原 北口の教会通りのところにあります。お店の名前を提案しました。蜂蜜の色が見えるようにラベルは文字だけにして、植物の名前だけ書くようにしていてというアイデアを考えたり。

平本 ワインテイスティングの手法でやるのはいいですね。

音楽も似ているところがありますね。例えば、新しい音楽が流行ってきたりしたときに、楽しみ方や今までの音楽からどういう流れで来たのか、どういう国や地域、人に楽しまれているのか分かるだけで、途端に手を出しやすくなることがあります。最近は、新しいジャンルが出てくると「Naver まとめ」っていうサイトにそういう一連のことが音源付きで投稿されたりして、以前よりは色々な音楽に手が出しやすい状況になってきていると思います。

勅使河原 まぁ今編集の時代ですよね。幅允孝さんとか、ああいう職業って暫く前考えられなかったですもんね。どう編集するか、見せるか、今どんどんそういう時代になってきているんだと思います。

平本 そうでしょうね。音楽も、どういう風に受け取ってもらうかを作る側が工夫しますし。ここ6、7年でネット環境が整った事と関係しているのですが、色々な音楽が出てきて、音楽の種類もとても細分化が進んだので、2000年頭まであったようなマスに投げて100万枚売れるという事がほとんど存在しなくなってきました。だから自分の音楽を届けたいところはどこか意識するようになりましたし、どういう形で提示したら面白がってくれるかも考えるようになりましたね。

勅使河原 ネットで買うことが前提になっているので、ある1つの本でもCDでも、ジャンルを1つに限定しなかったり、色んな検索キーワードで引っかかってくるようにしていたりしますよね。

平本 例えばコンピュータ音楽の新曲があるとして、どんな人が作ったものなのか、いつもコンピュータ音楽しか作らない人が作ったものなのか、美術家としても活動している人が作ったものなのか、映画音楽も作っている人が作ったものなのか、それによって同じものでもどこにアプローチしたいのかが明確になる気がするんです。戦略的なものもあると思いますけど、指向性を見せるにはタグ付けは必要な気がしています。

蜂蜜の、どのパンにあうかとか、何と合わせると美味しいとか、そういう要素を提示することでどういう日常とリンクしているか、知らせるのが必要な時代になった部分もあるんじゃないかと思いますね。

勅使河原さん、『ジョエル・ロブションのすべて』という本を翻訳されていますよね、700のレシピが載っている。あれはどれくらいの期間作業されたのですか?




『ジョエル・ロブションのすべて』ジョエル・ロブション(著)勅使河原加奈子(翻訳)

勅使河原 1年半くらいですかね。

平本
でもこの量だとそれくらいかかりますよね。

勅使河原 これ苦労したのが、一般の人用ってことなんですけど、鴨の中に食材を詰めて、丸ごと焼くのにも、その縛り方の絵が無くて、言葉でしかない。だから、自分の体を鴨に見立てて縛り方まで実践して(笑)。

平本 はははっ(笑)、ここに糸を通して。

勅使河原 ここを通して上モモへ。

平本 足がつったりしませんでしたか?(笑)

勅使河原 つりそうでした(笑)。で、専門用語が多いので、私のアイディアで別冊資料をつけてもらったんです。

食材の種類から部位の説明までここに全部書いてあります。フランスの方がお肉の部位が細かいんですね。あと調理器具と動作。これは無機質な辞書みたいな絵を入れてもらいました。

平本 フランス料理を本格的に作るための基礎知識本付きという感じですね。専門用語って分かりやすく翻訳すればいいという訳じゃないですしね。

勅使河原 フランスに料理修行に行く人がこの本を買ったら、こっち(『ジョエル・ロブションの全て』)は置いてっていいから、これだけ(別冊資料)持ってって欲しいですね。

平本 レシピの公開はもちろん、ここまで細かくフランス料理について示されるのは素晴らしい仕事ですね。

勅使河原 自分もゆで卵作る時ぐらいしか読まないんですけど(笑)、何分だっけなみたいな。

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