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東京を巡る対談 月一更新

巻山春菜(畳職人)×平本正宏 対談 植物からものをつくる魅力


<畳の素材にいろいろな変化も>

平本 今畳職人さんで女性の方は何人くらいいますか?

巻山 んー、奥さんで手伝っているという人もいるので、はっきりとした数字は分からないですが、私が直接知っているのは2人で、そのうちの一人はやはり奥さんです。もう一人は福島の女性で、さっき話した茨城の学校を出た人です。

平本 その女性とはお知り合いですか?

巻山 一度お会いしたことがあります。畳の競技会というのがあり、そこに見学に来ていました。

平本 競技会というのは、皆で技術を見せ合うのですか?

巻山 技術とか速さを競います。

平本 それはなんか未知の世界と言うか、面白い、見てみたいですね。

巻山さんも出場されたりするのですか?

巻山 いえ、そこまでの実力はありません(笑)。

平本 じゃあ、かなりの猛者達が集まるのですね。競技会は年に何回くらいありますか?

巻山 二年に一度千葉の幕張メッセと神戸で会場が替わります。畳屋だけでなく、布団屋さんや大工さん等色々な職業の人が同じ会場で競います。

平本 昔と比べて畳に進化、変わってきていることはありますか? 例えば巻山さんならではのオリジナルであったり、工夫されていることなどありますか? そういう競技会が開かれているということは、年々技術革新があるのかなと思ったのですが。


巻山 普通の畳ならそんなに方向性を出す必要も無いですけど、縁に関しては最近では、くまモン柄や面白い色柄がいっぱいあります。あとは畳の表が藺草じゃなくて和紙で出来ていたり。

平本 えっ! 和紙って紙の和紙ですか? そんな畳があるんですか!

縫い方はどうされるのでしょう?

巻山 縫い方は一緒です。材料が違っていたりとか、今様々な素材は開発されていますね。

平本 そういう新しい素材はどのように出てくるのですか?

巻山 普通の仕事をしているだけでは仕事が来ないのが現状なので、皆試行錯誤をしているのだと思います。あとは畳は使っていくと色が変わってきますね。ところが和紙だと色は変わらなく、緑に染めたら緑のままになるので、料理屋さんなどでは結構使われますね。ビニールで出来た畳もあり、風呂場用などに使われています。それは畳を模したマットですが、皆畳を感じるんでしょうね(笑)。

平本 そうやって畳が使える場面を増やしたり、需要を広げる努力を業界的に積極的に行っている訳ですね。

巻山 そうです。うちは規模が小さいので、二人でやって一日につき1部屋分の畳をやるぐらいで、そこまで変わったことはしていないです。一般の家庭では奥さんが昼間いる場合が多いので、男の職人さんが訪ねるよりは女性の職人が訪ねた方がお客さんも安心するのかなって思います。それはうちのお店の個性であり特徴でもあります。

平本 やっぱり喜ばれますか?

巻山 珍しがりますよね。「女の人がやっていたんですね」って。

平本 そういう驚きからも畳に興味を持つ人が出てくると思います。人から興味を持つことって多いじゃないですか。その世界のことはよくわからないけど、この人には興味があるからその人を入り口にその世界を覗いてみるっていう感じ。昔から音楽とか映画に興味を持つときってそういうスタートだった気がするんです。そこから更に興味が湧くと、もっともっとその世界を知りたくなる。僕も今回、巻山さんを通じて畳職人の世界をすこし覗かせてもらっていますし、教えてもらうとその世界の面白さは伝わりますよね。

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