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東京を巡る対談 月一更新

粟田大輔(美術批評家)× 平本正宏 対談 「東京」を形作る条件

<「条件」の顕在化>

粟田 一方で、歴史的な背景を抜きにしても、このグリーンベルトは、地域にとって意味のある場所なんです。ここでは、祭りが行われるし、日常の通り道でもある。つまり「ハレ」と「ケ」の場所なんです。民俗学者の柳田國男が、日本の近代化にあたり、「ハレ」と「ケ」の区別の混乱を言っているけど、まさにそういう混然とした場所になっている。東京には、こうした法や慣習によって、いくつかの条件が複層化されたようなところが他にもいろいろあると思う。

平本 グリーンベルトは、都市計画構想のスタート地点になる予定だったんですね。

粟田 そうですね。本当は、先に続いていたはず。それがガードレールで塞がれてしまっている(笑)

平本 グリーンベルトの歴史的意味を理解する以前から、この場所は粟田さんにとって日常生活に欠かせないスペースだった。それがのちに歴史的背景を調べるにつれて、東京の「成長過程」と自分の成長がリンクしているような感じを持たれたのでしょうか。

粟田 最近思うのは、自分の性格もそうですが、やはり条件によっていろいろ規定されているなと。このグリーンベルトを見ても、歴史的な条件もあるし、自分にとって極めて個人的な条件もある。そういった条件に目を向けながら相対的に俯瞰して見ることが、「東京」を読み替えるうえでの不可欠な視点になるんじゃないでしょうか。

平本 そうですね。そうした条件設定が新しい見方に繋がるし、逆に設定された条件を取り除いた先に何かの観念が浮かび上がったりしそうです。

粟田 言葉もそうですが、それぞれの個人的な意味合いとともに、歴史的に使われてきた共有的な意味合いの2つが備わっている。同じように、表現することや、それを感知するという振る舞いは個人的なものですが、同時に共有的な条件の積み重ねが当然含まれているわけで、このあたりの条件をいかにして顕在化できるかが気になっています。

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