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東京を巡る対談 月一更新

鳴川肇(建築家)×平本正宏 対談 遠隔地の風景と時間軸の作図法

<副産物だった地図へ>

平本 鳴川さんはバックミンスター・フラーに影響を受けていらっしゃるわけですよね。で、そもそも地図を作ろうという気持ちをずっと持っていたんですか。

鳴川 そういうわけではなかったですね。説明すると――。

ブルネレスキやダ・ヴィンチの発明した透視図法に基づいて、スケッチは描かれるし、写真も同じ原理でできていますが、この方法だと歪みができる。さらに、画角に制限がある。それゆえ、被写体を演出したり、誇張したりして、フォトジェニックな写真が撮れるわけです。

それで、画角無制限で、真上も真下も取れて、歪みを少なくすることができないかと考え、球体に光を取りこめる写真機を作って、全方位の画像をまず球に描きこみました。

それをさらに平面にどうやって描き写すかを探るなかで、フラーのダイマクション地図を利用できると思いついたのがきっかけでした。

平本 じゃあ、その時は、世界地図を作ることは考えてなかったということですね。

鳴川 そう。逆に、フラーの地図の技術を、写真に応用したわけです。

考えを実践するために写真機を作ったのですが、印画紙で2つのドームを作って、その半球の中心にピンホールを開けて撮影し、内部に写った2つの画像を合体させると、全方位球体画像ができるんですね。これを使って、オランダのいろんな場所で撮影してましたね。

平本 でも、これだと、平面にはしてますけど、長方形にはなっていないですね。

鳴川 そうなんです!


鳴川さんが撮影した全方位球体画像を平面化したもの

みんな面白いねって言ってくれたんですが、なかには辛口の人もいて、歪みは取れてるけど、ギザギザが残るのは惜しいねとも言われました。

それをなんとか取り除けないかと悩んでいるうちに、四角い平面に落としこむ方法を思いついたんです。で、その方法を使うと、新しい世界地図を提案できるんじゃないかと……。

平本 なるほど~(笑)。つまり、地図は副産物だったんですね!

鳴川 そうそうそう。

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