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東京を巡る対談 月一更新

Hajime Kinoko(現代アーティスト、緊縛師、ロープアーティスト、写真家)×平本正宏 対談

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〈築いたものを一度封印して、もっと自由に新しいことを〉

平本 赤い紐を使い始めたのはいつ頃からなのですか?
最初の縛りは何歳って覚えていますか?

Hajime 覚えてますよ。自分の彼女を縛ったのがその時だったので21歳でした。そのときから、10年くらいちょいちょい縛ってて。

平本 「Red」をやり始めたのはいつですか?

Hajime 9年前かな。9年前にカワモトさんというカメラマンが、自分の後輩のライブをよく撮りに来ていて、会って話をしたら気が合ったので、作品撮りをしましょうってことになった。で、白ホリで何かをしようってことになったんです。白ホリだと面白いことができるんです。例えば白いサイコロに乗っているだけでまるで浮いているかのように撮ることができるし、重力とか変なふうに感じさせることができるし、すごく面白いんです。それで、ちょっと普通じゃない縛りをやりたいねってことになり、そこで赤い縄を使い始めたんです。でも、もともとずっと赤い紐で縛っていたんです。

平本 その赤い紐を使い始めたのは、いつ頃ですか?

Hajime いつぐらいだろう、あんま覚えていないなぁ。13、4年くらい前かな。

平本 赤い紐は、縛りをやっていくうちに思いついたのですか?血やその繋がりを連想しますが。

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Hajime やってみたときに気づきましたね、最初ね、違うものも両方を持っていたんですよね。赤はやっぱりすごい映えて。あのね、SMをやっている人たちからしてみると、赤で合わせる色って絶対に黒なんですよ。赤と黒ってSMカラーなんですよ。で、白かっこいいなと思って。繋がりは黒だとダークなイメージになるんだけど、白だと繋がりというイメージがポジティブ、”綺麗な繋がり”ってなるなって思ったんです。

平本 確かに写真集を見ていて、背景の白にポジティブさを感じますね。

Hajime そうですね。この間渋谷でやったのは2回目の展示で、最初は神保町画廊でやって。展示をやった時に、お客さんが入りきれなくなり、制限されるくらい来てくれたんです。だけど、いま僕自体がRedに頼っているところがあるので、一回Redを封印しようかなって思っているんです。だから写真集と展覧会のタイトルも「Perfect Red」にして。封印というか、Redをこれからもっと作っていこうという気持ちを一回やめようかなって思っているんです。

平本 それはやり尽くしたという気持ちではなく、別のことにチャレンジしたいという気持ちからですか?

Hajime うーん、多分ね、飽きそうな気がするんですよ。園子温さんと一緒に飲んでいる時にその話をしていて、そうだなと思ったことがあって。彼って一回すごいねって言われたものをもうやめちゃうんですよ。それでまた次のものを作る。作家って大体自分たちの作家性を作るためにずっとやり続けるじゃないですか。

平本 同じものを作り続ける、描き続けるというのはありますよね。

Hajime 僕が他の作家と違うのは、絵の中でキメなきゃいけない、じゃなくて、縄を使ってることが作風になっているので、ジャンル自体が作風だから別に何してもいいかなって。もうちょっと自由にやりたいです。

平本 Redの反響があって、この作品のようなものを外から求められたりする時もあるわけですよね。

Hajime それは仕事としてやります。この間avexさんがプロデュースしたクラブの椅子を縛ってくれって。10脚縛って。

平本 皆さんその縛られた椅子に座って飲んでいるんですか。不思議な、でも面白いです。

Hajime avexさんみたいに音楽を作っているところからも自分の作品をいいって思ってくれているのはありがたいですね。

平本 赤い縄で縛ってほしいと求められれば縛ることはあってもKinokoさんの中では新しい挑戦をしたい。

Hajime そうですね。avexさんの依頼で椅子を縛った時は黒縄でしたし、あと今構想段階なので何も言えないですけど、今度大阪の大きい百貨店の一階を全部縛っていくということになってて。なんというか、作品を作るというイメージから離れたいんですよね。今までは、やって来たことを形にして凝縮していた。だけどそれって今まで自分が遊んできたものとか自由にやってきたものから生まれてきた技、発想を凝縮させてきたわけです。ここで自分の中に新しい引き出しを作ることは今すごく必要で、自分はここ最近とても忙しかったので、今は少し休もうかなと(笑)去年とか本当に休んだのかなっていうくらいで、1日も家でゆっくりしていないんですよ。お付き合いでどこか旅行したりというのはありましたけど。毎日どこかに出て、家帰ったら風呂に入って寝るだけ。仕事自体はすごい楽しいですけど。

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