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東京を巡る対談 月一更新

Hajime Kinoko(現代アーティスト、緊縛師、ロープアーティスト、写真家)×平本正宏 対談

 

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〈自分にしっかり軸があれば自分らしさは勝手に出てくる〉

平本 Kinokoさんと知り合ったのが去年の11月くらいでしたが、KinokoさんのTwitterを拝見していると毎日どこかに行っていたりしていて、海外も結構行かれていて、すごくお忙しいという印象を持ちました。休むことって僕も必要だと思っていて、それは新しい作品を発想する土壌や種を作る時間になると思うんです。手を動かすことをあえてしないでいる時間も重要な気がします。

ここ数年がいままでで一番お忙しい感じですか?

Hajime どんどんエスカレートしていっているので、ちょっと休みを置かないとなって思います。あとね、忙しい中でやり取りをしていくと妙に巧みになってきて、だからあんまり良くないなって思うんです。いいんだけどよくない。もっと切れ味のあるものを作りたいと思っているから。

それはそれでいいと思うんです。だからうまい付き合い方として、今あるものを一回全部無くしたような心境になって、ただ単に遊びたいなっていうことです。最後の方になると責任感を持って作ったものとかあるんですよ。Redの写真集を作る時も、形にしないといけないから、ページ数が足りないから、じゃあどういう作品を作ろう?とか思いながら作品を作るのって、あまり良くないです。子供を作る時も自然にできる方がどっちかっていうとまだいいじゃないですか。産みたいなと思ってエッチするのもいいと思うけど、セックス自体も自然にするのはいいと思うけど、産むためにやろうかってなると僕は結構しんどいです。作品も無理やりくり捻出して作るのもどうなんだろうって思います。

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平本 自然とブワッと自分からほとばしるように音が出てきて出来た曲って、作品そのものパワーが強かったり、鋭かったりして、自分に中での評価の高さが長い時間持続するんです。何年経っても、こんな作品よく作ったなって思える。だけどどうしてもこの曲を作らなきゃと思ってひねり出して作ったものは、その時は納得しても時間が経つと自分の中に残らなくなってしまうときもあります。責任感を持ちながら作品を作るのは、一つの力にはなりますけど、瞬発力で、なんかわからないけど思わず出来ちゃった作品はやっぱり強い。そもそも作品を作るということの根源はそういうところにあると思いますし。

Hajime 責任感を持って作品を作ることはいいんですけどね。やりたくてやった、とか楽しくてやったとかノーストレスで作品を作る環境が欲しいですね。やりたくてやった、楽しくてやったというのが大事で。縛りもね、欲望から生まれるのもあるんですよ。僕も女の人の体を見て興奮することはあるし、いいお尻だったら、このお尻どう縛ろっかなとか(笑)綺麗なおっぱいとかだったら、綺麗なおっぱいをどう縛ろうかとか。おっぱいを崩さずに周りを縛って仕立てるのか、もしくは綺麗なオッパイを壊すんだったらどう壊そうかなとか。右のおっぱいを崩して、左のおっぱいをそのままにしておくのかとか考えます。なんか色々イメージがわくじゃないですか。いたずら心、欲望でやりたいなって感じです。

平本 欲望を新たな方法で発露させるとか。

Hajime そうですね。一応新婚なので、節度ある感じにしようかなと。あんまブレーキをかけすぎるのもよくないから、その時は嫁に謝って(笑)

やっぱなんかね、しっかりと自分というものを持っている人はどう作っても作家性って出るんですよね。これKinokoさんがやってるんだとか。だから今俺はそんな恐れてはいないですね。0から作家性を出すと、やっぱり自分が出ちゃうから。

平本 それは本当にそう思いますね。学生の頃にずっとノイズの曲を作っていたんです。

Hajime ノイズやっていたんですか!?

平本 僕ずっとノイズミュージックしか作らなかったんですよ、しかも即興の。発信器とかシンセからノイズを出して、爆音で鳴らして即興で音楽を作っていくということをずっとやっていたんです。

Hajime 僕、ノイズのグループの一員ですよ。

平本 え、そうなんですか!?

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Hajime 宇川直宏さんがやっているバンドがあって、目玉のお面を被って、”XXX-RESIDENTS“っていうのをやっていて、そのイベントに僕は縛り役で出ているんです。演奏するふりをして(笑)、だいたい盛り上がってきたらさっと引っ込んで、女の子を連れて出てきて、女の子を逆さ吊りにして、セットされている洗濯機の中にじゃぶじゃぶつけちゃうんです。

平本 すごい展開(笑)

Hajime そのあとに物干し竿のでっかいのを作って、女の子をそれに縛って、ウェブ縛りをして、女の子を干して、ブラックライトで光をあてる。そういうのをしています。

平本 へー、すごいですね!

Hajime ノイズってパラレルワールドじゃないですか。だからショー自体もパラレルワールドになんなきゃいけなくて。

平本 僕はノイズに取り憑かれていた時期があったんです。それまで音楽というのは、五線譜があって、音符を書いていって楽器で演奏するものだと思っていたんですけど、ノイズって時間感覚から何から全部自由じゃないですか、楽譜で表現できないし。それに、自由な分、自分一人で自分の作り出した世界の責任を背負える感じが本当に面白かったです。

ノイズばかりやっていた頃に、チェロの美しい曲を書いて欲しいといきなり言われたんです。どうしたらいいかなと考えていたら、僕の音楽の師匠に、「もしチェロの曲を、それ以外のどんな曲を書いたとしても、自分に作家性がしっかりあるなら自分らしさは勝手に出るものだよ」と言われて、ハッとしました。ああ、そうだよな、と思って、それからはどんなジャンルの曲でも気にせず書けるようになったんです。確かに、それ以来ノイズ以外の色々な曲を書いていますが、何をやっても自分の作家性は出てきちゃうものなのだと思います。ただ、そのうちそれが出てくることに飽きてきて、全然違うことをしたくなるのですが(笑)

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