平本 こうやってお話うかがうとマリさんと音楽は切っても切り離せない関係ですね。
ヤマザキ そうですね、それこそ、母の胎内にいたときから聴いているので、オーケストラを。私は跡は継がなかったですけど、でも音楽が無いとダメな体質にはなっていますよね。オーケストラやっている人って家であまり音楽聴かなかったりするじゃないですか、でもうちでしょっちゅう母がカルテットやったりトリオやったりしていたので。
平本 とにかく練習はしますよね?
ヤマザキ しかも、うちはビオラだったから。
平本 和声的にもね、微妙なところを弾いているんですよね、メロディじゃなくてベースでもなくて。弾いているのだけ聴いていると何の曲かわからなかったりして。
ヤマザキ そうそう。なんともね。でも、時を経るとオーケストラの始まる前の音合わせのところ、あれを聴いているだけで癒されたりするんですよ。そこらへんは昔を思い出しますね。
母は外国人の音楽家が来るとなぜかうちに連れてくるんですね。それでどんちゃん騒ぎをして、酔っぱらって楽器を弾き出したりとかして。ウイーンフィルの人たちが来たときなんか酷かった! ビールガンガン飲んで、グッチャグチャのところでガハガハ笑って楽器弾いて(笑)、でっかい靴がいっぱいあって、楽器の扱いもいい加減だったりして。
そういうのもあって、うちの旦那は音楽好きですけど、そういう人とじゃないと一緒にはいられないですね。いまどうしてこの曲が聴きたいのかとかを悟ってくれる人じゃないと。
平本 マリさんがマンガを書く上で、旦那さんから音楽のアドバイスというかそういうのもあったりするんですか?
ヤマザキ ないですけど、勝手に自分の好きな音楽を提唱してくるんで(笑)、最近はやたらバロック音楽を送ってくるんですよ。これいいからってYouTube見てみると2時間とかあったりして(笑)、そういう人がそばにいるのは面白いけどね。
音楽は好きだけど、音楽マニアで、なんとかじゃなくちゃダメだみたいのはないんで。ただ、音楽と離れていることはないですね。
平本 お母さんに音楽の道に進まされそうになったことはないんですか?
ヤマザキ 進まされそうになっていましたよ。だけど、絵を描いている方が楽しいんですよ。だから、まずうちの母に申し訳ないけどヴァイオリンはできないと伝えて。やっぱり親がやっている楽器と同じものを子供に教えるって無理ですよ。他の子には親切に教えるのに、私にはものすごく怖かったですから(笑)、親のこんな怖い側面を見るくらいならやりませんって。ヴァイオリンは小学生でやめてしまって、ピアノはイタリアに行くまでやっていましたね。
でも、どんなに下手でも、表現方法の1つとしてピアノが弾けるっていうのはいいなと思いました。
平本 イタリアで歌はやらなかったんですか? 本場ですし。
ヤマザキ 声が低いから、コントラアルトにスカウトされたことがあるんだけど、歌声は低くもないんですよ。昔付き合っていた人がファゴット奏者で、音楽家の知り合いが沢山いて、コントラアルトがいないからやってくれと頼まれて。ただ、残念ながら声楽の方には興味が行かなかったんですよ。山下達郎ならいいんだけど(笑)、山下達郎の音域がちょうどいいんですよ。
平本 男子だとちょっと高いんですよね(笑)。
ヤマザキ そうそう。だから山下達郎がちょうど良くて、松田聖子とかは高くて歌えない(笑)。あとは、サラヴォーンとか。