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東京を巡る対談 月一更新

旬の東京が織り込まれた音楽を リラックスした空間で楽しんで

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今、東京に住む自分自身をさらけ出した旬の音楽

・TPを制作する上で、どこがいちばん印象的な場所でしたか?

H:一つに絞れないのですが、印象的という意味では2つあって、1つは「TOKYO Home」で使っているレコーディングした音、これはもう引っ越してしまった僕の前住んでいた家の室内で録った音です。住んでいる場所の音を録るってものすごくプライベートを曝け出すなあと思っていたのですが、それから半年経って、今度はそこから引っ越してしまうと自分の生きた過去の記録を聞いているようで不思議な気分です。

もう1つは、「TOKYO Lost」で使っている音で、友人の家からの帰宅途中で公園でレコーディングした音。ここには、鳥のさえずりと工事現場の音が両立していて、なんとも東京らしいと思っています。東京はスクラップ&ビルドを繰り返す街ですが、その片隅に自然もあり、そのスクラップ&ビルドの影響を受けているのは自分たち人間ばかりでなく、動物や植物など自然も多大な影響下にいると再認識します。

・ご自身のことをさらけ出してもらえると、聞く方としてはとても親近感がわきます。次回作以降では、ホテルなどに宿泊すると思うのですがそこでのノイズなど、ひらもんをさらけ出す音が聴けることをとても楽しみにしています!

わたしもあの公園での鳥のさえずりと歩行の音はとても印象に残っています。高いノイズと低いノイズの掛け合わせがとても耳に心地よく、そしてピアノが始まるワクワク感を楽しめます。

・どういう手順でTPは制作されたんでしょうか?

H:まず東京の雑踏をフィールドレコーディングするところから始めました。今回、自分にとって一番身近な音から如何に世界を拡大できるか、それをしてみたかったので、なるべく僕自身の日々の活動、生活の中にある音をレコーディングしていきました。

基本的にはフィールドレコーディングして、いい音を集めるみたいな趣味は全く無いんです。だから、いい音ではなく、もう少しコンセプチュアルな視点からレコーディングして、それをいい作品に昇華させることがしたかったんです。

フィールドレコーディングの音が溜まってきたら、それらを聴きながらピアノを即興演奏し、録音していきました。はじめは本当に試しくらいのつもりで、東京の音を聴きながらピアノを弾いてみたのですが、そのときにあっという間に7曲できてしまい、この手法でいけると確信して作業を続けたんです。

あとは、フィールドレコーディングをどんどんしていって、まとまったらピアノを演奏し、録音するという作業を繰り返しました。

それで大体50曲くらいできて、第一段階で30曲に絞って、それを更に16曲に絞って、あとは東京の音と再びミックスしていく作業をしました。

レコーディングからミックスまで全部自分1人でして、ミックスのアドバイスをエンジニアの元木一成君にもらいながら完成まで作業しています。

それを元木君がマスタリングしてくれて、完成に至りました。

・TPがどうやって出来たか、臨場感あふれる回答とてもうれしいです!気の合う仲間との共同作業ってとても楽しいし、そうするとみんなが楽しめる作品も出来ますよね。

そして、フィールディングレコーディングしてすぐに7曲もの即興曲が出来てしまったところ、ひらもんの天才性がいかんなく発揮された瞬間ですね!

もしかしたらですが、住んでいるまち、東京だからそこまでの即興性が発揮できたという感覚はありますか?

これが行ったこともない都市で同じことをした場合、どうなるだろうと今、想像できることを聞かせてもらえたらとても嬉しいです。
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H:他の都市のバージョンを現在まだ作っていないのではっきりとはしませんが、たぶん住んでいてもいなくても変わらないかと思います。それくらい、ピアノを弾くときは録ってきた音に集中していました。ただただ採取してきた音と向き合って出てきた音楽なので。だから尚更、他の都市バージョンを早く作りたく思っています。そして、そのために音の採取はもう既に始めています。

・このシリーズは、採取した音がキモなんですね。それらとピアノとともに真摯に向き合う。あらためて納得しました。

TPで使われている環境音で、いちばんこだわったものはどれですか?

H:これは今回用いたフィールドレコーディングの音すべてに言えることなのですが、欲張らないということです(笑)

今回、作品をプライベートなものにしたくて、環境音の収録は自分の活動や生活の範囲に限定していました。でも、ついついちょっと違う場所に行ってみたくなってしまう、バリエーションを増やしたい思いで(笑)

これをグッとこらえて、逆に自分が普段聞いている東京の音は何か、落ち着いて一つ一つ向き合って、その音を収録していきました。だから、基本的にいつもレコーダーを持ち歩く生活を2カ月ほどしていました。

・なるほど、フィールドレコーディングを欲張らなかったことで、作品のなんというか生活との密着感を感じられたわけですね。わたし高校が久我山なので、わたしはものすごくそこに懐かしさを感じて、あのアナウンスを聴くたびにニヤニヤしてしまいます。

H:確かに自分が知っている場所の音と分かると聴き方も変わりそうですね。その場所への意識や感覚があれば、曲が思い出に浸透していく可能性もありそうですし。

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