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東京を巡る対談 月一更新

野村佑香(女優)×平本正宏 対談 子役から女優、そして母への軌跡

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<あえて手放すことでアイデアが降りてくる>

野村 そういうのは神懸かり的に舞い降りてくるものじゃないの?

平本 もちろん降りてきたり思いついたりするものなんだけど、それをもっとコンスタントにできないかと最近思っていて。神懸かりが起きやすいように、つまり、常にアイディアが浮かびやすいコンディションをどうやったら維持できるか考えています。ウンウン唸って色々試して曲を形にしていくことはあるんだけど、1時間くらいでパッと閃いた方が自分にとっても、聞く人にとっても、いい曲なことが多いんだよね。それなら、そういうのが頻出できた方が自分にとっても面白い。

野村 その効率化を図るために適したところにコンディションを持っていこうということですね。

平本 そうです。それをやるためにはどうしたら良いかということで、スポーツを始めました。フットサルをしているのですが、とてもいい時間を過ごしていると思います。集団競技なので、その場に集中しなくてはいけないですし、そのとき普段とは違うことに頭も使っているので、身体や神経が活性していくのが実感できるんです。あとは、なるべく時間を決めないで作曲をするようにしています。

野村 ルーティーンがいい人もいますね。

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平本 今までは完全にルーティーンでやってきたんです。それこそ9時から始めて夜までというように。でも、今パッとやりたい時は、夜だろうが早朝だろうが気にせずにやることにして、逆にやりたくないときはパッと手を離して、別の仕事したり、見なくてはいけない映画を見たり、本を読んだりしています。で、それをほんの数分しているうちにアイディアが出ることもあるから、そうしたらまたすぐ作曲に切り替える。

なんというか、ダラダラしないで、瞬間瞬間を高い集中力で過ごしたいということなんだと思います。うまくいっているときは、あとひたすら曲を書かなくてはいけないときはその流れに乗ればいいから、朝から始めて夜まで没頭すればいいけれど、そうでないときの時間と身体の使い方を調整している感じですね。少しでも有効活用したい。

野村 それ分かる気がします。私も芝居で台本を読んで、その役を自分の中に落とし込む作業をするときに、手放すということがなかなか出来なかったんです。最初は自分が根詰めて読み込めばできると思っていたのですが、最近は1、2回台本をパーッと読んでから一回手放すことをしています。それは自分の中で発酵期間のようなもので、別のことはしているけど、どこかで役のことを考えている、それがどんどん膨らんできたらもう一回声に出して読んでみる。最近漸く自分の中でその流れを掴めてきました。

平本 手放す期間はすごく重要なのは分かります。明確なビジョンがないのに根詰めても、ベクトルが定まっていないですから、ウロウロしてしまい、時間ばかり過ぎてしまう。その間に、変な方向に行ってしまったりして。

野村 中はまだ固まっていないのに、外側を固めちゃっている状態。そういうのって後から気付いちゃうものですよね。

平本 本当にそうです。そんな時間の使い方には、逆に遠回りさせられたりしますから。だからビジョンが自分の中で揺らぎなくハッキリした瞬間にサッと手を出せばいい。それまでは手を出さない方がいいんですね。でも、その切り替えは意外に難しいのも事実ですね。

佑香さんはそのプロセスを獲得したのはいつぐらいの頃?

野村 最近だと思う。大学の時にお仕事を一回休んで、その後舞台を何本もやらせてもらって、舞台をやってから学んだこともあって。獲得したのはここ2、3年かな。

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