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東京を巡る対談 月一更新

野村佑香(女優)×平本正宏 対談 子役から女優、そして母への軌跡

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<たくさんの幸せな家族を見てまだ見ぬ我が子への想いが募る>

野村 この「ぐるっと」の旅でカンボジアに行った時、ポルポト政権の話を聞いたけど、人々のその心の傷はまだ生々しいんです。「当時、お姉ちゃんと畑仕事をしていて、翌日になるとお姉ちゃんがいなくなっていた。その後、血が付いたお姉ちゃんの制服を見た」と、ホームステイ先のお母さんが話してくれました。それを聞いて何も言えなくて。そのときカメラが回っているから私が何か言わなければいけないとは思っていたのだけれど・・・。

でも、番組のディレクターがこれは佑香さんの番組だから、佑香さんが何も言えなかったらそれで構わないと言ってくれて、その一言にも助けられたりしました。だから、本当に生の声のすごさ、重みを一身に受け止めた時間でした。またそのお母さんが本当に優しくて、娘が信じて連れてきてくれたあなただからこそ、気持ちよくここにいて欲しい、自分のお母さんだと思ってここで過ごして欲しいと。それを心から言ってくれているのがわかるから、ただただすごいなあと思いました。そういう経験をいっぱいさせてもらえたんです。人生が変わったと思いました。普通の旅では、その地域のひとの生活に入り込むということはなかなかできないことですから、本当に有り難い機会を頂いたなと思っています。

平本 テレビを見るひとは佑香さんを通して、画面越しにその事実を知ることができますし。でも、画面には写っていない、放送の枠では入りきらなかったことを佑香さんは沢山感じ取っているのでしょうね。

全シリーズの撮影はどのくらいの期間で行ったんですか?

野村 番組は5年間放送しました。その間、撮影は全部で9ヶ月間くらいです。

平本 そうかあ、その間旦那さんは少し寂しかったかな(笑)

野村 でも、慣れているから(笑)

平本 そういう経験は本当に大きいでしょうね、佑香さん、いいお母さんになるね。
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野村 旅でもそうですけど、たくさんの幸せな家族を見れました。海外に行くと、日本でもそうですが、地域によってはいつ死ぬか分からないという感覚がより身近に感じるときもありますから。私はいま死んだとしても後悔しないけど、唯一の後悔は、夫の子供を残せないことだと強く思って、子供という選択肢がどんどん広がっていった。それは「ぐるっと」のおかげでもあります。だから、仕事をやり続けたいという気持ちとのバランスは難しかったです。でも、いろいろな素敵な家族を見ているから、こういう風になりたいという思いは強いんですよね。

平本 音楽もいい音楽に接し続けると、音楽の素晴らしさを体験できるから。素敵だな、いいなって素直に思える体験の多さは、同じ道を進みたいという気持ちを与えてくれるよね。なんか子供が生まれたら楽しい時間が始まりそうだね。

野村 子供が生まれることで増えることが多ければいいなと思っていて。手放したり、あきらめたりすることもあるだろうけど、でも子供から教えてもらうことは沢山あると気がしているんです。子供がいなかったときには考えられないような幸せも知ることができるんだろうなって思います。

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