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東京を巡る対談 月一更新

野村佑香(女優)×平本正宏 対談 子役から女優、そして母への軌跡

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<旅番組で学んだ歴史と人々が背負っている思い>

平本 最近はいかがですか?ご結婚されたのは何年前?

野村 5年前に結婚しました。「ぐるっと」という旅のシリーズが始まる前に付き合い始めて。当時の彼、いまの旦那さんに一ヶ月旅に行ってきますと何度も伝えるという感じでした。最初のイタリアは40日間行きっぱなしで、休みなく毎日カメラを回しっぱなしでした。テレビには前編後編で1時間半ずつの放送ですから、すごい収録の量です。先程のターニングポイントの話ですけど、私の中では「怪奇倶楽部」と「ぐるっと」は大きかったな。全部で23カ国くらい行きました。

平本 「ぐるっと」シリーズの中で一番びっくりしたことは何でしたか?

野村 ポイントによって色々ありますけど、シリーズの一番最初に行ったイタリアかな。ちょうど建国150周年記念の時に行ったんです。海洋国家がいくつもあった半島だったところから一つの国になったイタリアの、色々な港町を定期船で訪れ、その地域の文化や歴史がどう残っているのかを見る旅だったんです。

各港町で人に触れあっていくと、イタリアに統一される前の小国が自分たちが生きている土地だと誇りを持っている人がいたり、ナポリの学生に話を聞いたら「まだ私たちの国は一つじゃない」と言っていたりして。16歳、17歳くらいの高校生が「言葉でイタリアを一つにまとめるというアプローチがあると思う」と話してくれたりことはとてもびっくりしました。もちろん、すでに1つの国としてまとまっているという意見の人もいましたが、国として形態は統一しているけど、150年経っていても地域に根付いているものはいまだに大きい影響があるのなだと知れて、すごく衝撃的でした。

シチリアのメッシーナという、イタリア半島から3キロくらいしか離れていない場所では「ここはガリバルディというイタリアを統一した人たちが攻め込んできたときに最後まで戦ってきた土地だ」と話してくれる人もいて。そういった歴史を背負って今生きているということを、日本から来た小娘に説明してくれる。日本にいるときは、そんなことへの意識も全く無かったから衝撃的だったんです。そうやってできた番組を面白いと思ってくれる人がいたから、幸運にも番組はその後7回続きました。

このイタリアでの体験は、これ以降の番組のシリーズを作る上で大きかったと思います。そこから色々な場所で、住んでいる人達に話を聞いて、歴史と言うのはその人達が背負っている想いだということに気がつきました。

この番組を通して自分が、訪れた地域の人たちがどういう想いをして生きてきたかということを身をもって知ることができていると気付いた時、すごい体験をしているなと強く実感したんです。この体験は芝居にも活かせるし、人間的にもすごく学べたことが多かった。

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