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東京を巡る対談 月一更新

佐々木拓哉(神経科学者)×平本正宏 対談 脳の研究が進めば音楽の作り方も変わる?!

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<研究にしろ、音楽にしろ、それで食べていけるありがたさ>

佐々木 平本さんはなんで音楽をやろうと思ったのですか?僕は高校生の時勉強やスポーツしかしていなかったので音楽とは考えていなかったのですが、平本さんは音楽をやらなきゃ、とか考えていたのですか?

平本 実はピアノも習っていなくて独学でした。中学校入ったときにミュージックステーションで小室哲哉がキーボードに囲まれていたのです。それを見たときに、カッコイイと思いました(笑)。

佐々木 多分平本さんと同じ世代ですけど、あの頃は全盛期でしたよね。

平本 全盛期でした。globeやTRFとかとても流行っていました。TKの、あのガジェットに囲まれている感がカッコイイなと思ったところから同じことをやってみたいという欲望になりました。

佐々木 あの頃のCDの売れ行きはすごかったでよね!

平本 500万枚とか売れていたんですよ。全体のセールスでいうと国民の何人に一人が、というスケールですよね。
作曲を独学でするまで、小学生の頃にエレクトーンを1年習っていたことはあったのですが、それ以外は全く。ただ、環境要因としては、母がクラシックが好きで、よく家の中で流れていました。だから、クラシックは好きだったんです、昔から。特にドビュッシーが好きでした。受験をするときになったら、運良く藝大にコンピューター音楽を勉強できる学科ができたんです。それでそこに入りました。

佐々木 コンピュータ音楽の学科はその頃からできたのですか?

平本 そうです。僕が一期生になります。コンピュータのスペックが上がって、作曲に使用するのが一般的になってきたときでもありました。音楽の進化はテクノロジーの進化と同列なんです。ピアノが作られたらピアノの曲が、エレキギターが作られたらエレキギターの曲が作られた。作曲家は音に大きく影響されますから。

佐々木 コンピュータのスペックが上がり、これからも音楽は進化していくのでしょうか?

平本 スペックが上がれば情報を詰め込める密度が変わるので進化すると思います。あとは、個人的には量子コンピュータで作曲となったらどうなるのか、気になっています。

佐々木 コンピュータで出す音と実際に人が演奏する音が違ったりするのでしょうか。

IMG_1414平本 コンピュータはパラメータ化するので、音を128分割するんですよ。音の強さや長さも0から127という値を基本として全部取ります。人間が実際に手で弾く音はそれ以上に細かいニュアンスがあるので、コンピュータで演奏した音とはやはり違ってきますし、コンピュータのプログラムで人間の生演奏に近づけようとすると、人は一回弾けばいいけど、こちらはプログラムにかなりの時間を要します。ただこれはあくまで楽器の演奏についてのことで、もちろんコンピュータだからこそ作り出せる音は、人間では演奏できないものも沢山あります。

平本 佐々木さんのご家族で研究者をされている方はいらっしゃいますか?

佐々木 いや、いないですね。理系の大学に行くと自然な流れで大学院の道に進んで、今の研究が面白いのでのめり込み、今に至るという感じです。

平本 子供の頃はまさか研究者の道に進むとは思っていなかった?

佐々木 そうですね。まったく思っていませんでした。ただ今はその仕事で生きていけていますが(笑)

平本 確かに生きていけるって重要ですよね(笑)。飯を食べていける、生活できているということは本当に大切です。
撮影場所にここ東京大学を選ばれた理由をお聞きしたいと思います。佐々木さんにとっての”東京”はこの東京大学のキャンパスということですが。

佐々木 僕は東北から上京したので、東京には色々な人がいる、色々な人が集まれる場所なんだなという気がしています。世界と比べるとまだまだかもしれませんが、ここ、大学も色々な方と出会えるチャンスのあるイメージを持っています。
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平本 確かに、ここで研究されたことを世界に持っていっているわけですから、直接の出会いだけでなく、出会うチャンスを作る場所でもあるんでしょうね。
最後にお聞きしたいことがあります。普段音楽を聴いたりしますか?

佐々木 聞くんですが、僕もCD世代ですので、普通にJ-POPを聴いたりしています。

平本 どこらへんが好きですか?

佐々木 何でも聞きますね。意外と昔小室哲哉さんが作った曲とか好きですね。

平本 小室哲哉プロデュースだと何ですか?僕はglobe好きでしたね。

佐々木 僕も一緒でした(笑)。本当にCDが擦り切れるくらい聴いてました。

平本 聴いてました、聴いてました(笑)僕は東京ドームコンサートまで行ったり。今だに聴きますか?

佐々木 聴きますね。あと、研究室の学生たちが若いので、皆んな好きなものに僕もついていきたいというのがありますね。聴いているうちに僕の方が詳しくなったりして(笑)今みんなはこういう曲が好きなんだなと思ったりしています。

平本 ははは(笑)でもそういう刺激は重要ですよね。新しい情報は自分を活性してくれる印象があります。
今日はお忙しい中、ありがとうございました!


佐々木 拓哉  / Takuya Sasaki

東京大学薬学部・大学院薬学系研究科  助教
2010年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。カリフォルニア大学サンディエゴ校・海外学振特別研究員などを経て、2014年より現職。日本薬理学会学術奨励賞、日本神経科学学会奨励賞、東京大学総長賞などを受賞。

撮影:moco http://www.moco-photo.com/

編集:矢本祥子

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