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東京を巡る対談 月一更新

小㞍健太(ダンサー/振付家)× 平本正宏 対談 研ぎ澄まされた経験的感覚—探り、踊る


<舞台に合う音楽>

平本 ダンサーとしても振付家としても、音楽は切っても切れない関係にあると思うのだけど、その関係についてはどう考えていますか。

小㞍 音楽は、観客と出演者が共有している大切なもの。同じ振付でも音楽が違うだけで、全然違うものになるし、雰囲気も変わる。平本さんの言うとおり、切っても切れない関係です。

平本 僕が初めてダンスの音楽を担当したのが穣さんの舞台で、そのときに振付や構成のしかた、ダンサーの音楽の聴きかたなどを見て、音楽単体での作曲とはひと味違うと感じました。

小㞍 違うと思います。でも、僕は音楽単体での作曲を逆に知らないかも。

平本 ダンスを作るときに、音楽が既成のものでCDとかから探すのと、作曲家がいて話し合うのとではどういう違いがありますか。

小㞍 自分のなかでコンセプトもイメージも決まっているものを作品にするときには、既成の音楽を探すのはすごく大変。舞台や音楽のイメージがもうあるから。そういう場合は、作曲家と相談してできると嬉しい。でも音楽からインスピレーションを受けて作品を作ることもあります。

このあいだの自作自演ソロでは、お願いした作曲家とはもう3回目だったし、普段からいろいろ話してて僕の好きな音とかも熟知してくれてるから、大体のコンセプトとイメージを伝えて、あとはお任せした。逆に、音楽から振りをつくった部分も大きかったよ。

平本 CDとかから使うときは?

小㞍 NoismのときはCDからでした。コンセプトに合ったものが偶然見つかって。リハーサルしながら替えたりはしましたが。

平本 どちらかといえば作曲家が常にいるといい感じですか。

小㞍 作曲は毎回必要ではないと思うけれど、専門的なアドバイスをしてくれる人がいるとすごく助かる。選曲のときに、音のバランスや、クラシックだったらどのヴァージョンのCDがいいとか、どこのオケで、とか。

平本 ああ、わかるー。金森穣さんの作品でドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」を使ったときも、一番合うCDを探すために穣さんと20枚くらい聴き比べした。

小㞍 やっぱりクラシックが好きだし、いつかはクラシックでコンテ作品を作りたい。音源は大事。CDのクオリティにしても、スピーカーにしても、舞台全体のクオリティに繋がりますから。

平本 ちなみに、これで踊ってみたいなと思っている曲はありますか。ジャンルとか関係無しに。

小㞍 無音!(笑)。すごく難しいんですよね、無音って。集中して気が張りつめてしまうし、でも自分と向き合える感じがある。いつか、身体から音が聴こえてくるように、空気感を表現できたらいいなぁ。

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