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東京を巡る対談 月一更新

ヲノサトル(音楽家)× 平本正宏 対談 コミュニケーション好きの音楽


<キーボード・コックピット>

平本 その後は作曲道まっしぐらという感じで?

ヲノ そうですね。作曲って、対位法にしても和声にしても、パズルみたいなもんじゃないですか。パズルゲーム解いて、どんどんフェーズがあがっていくみたいな。

平本 ちょっと公文に似ていますよね。

ヲノ そうそう、公文式(笑)。でも、先生が偉いなと思うのは、単なるパズルとしてではなく、いいメロディを書いたときにほめてくれるわけですよ。それで、対位法にしても、和声にしても、ルールを守ることが目的ではなくて、そのルールを使っていいものを作っていくかなんだと薄々気づいていくわけです。

平本君の中学校の時のJ-POPって何? 時代的にTK?

平本 そうです、TKですよ(笑)。中学1年のときに同じクラスにいた足立君っていう小室哲哉にやたら詳しい友達がいて。

ヲノ そういう奴いるよね(笑)。

平本 なんでそんなに詳しいんだろうっていうくらい詳しいんですよ、小室哲哉の身長とか体重まで知っていて(笑)、別に作曲はしていないんですけど。それで、足立君が小室哲哉プロデュースのCDをほとんど持っていて、カセットテープを渡すと「TKプロデュースベスト」みたいなカセットを作ってくれるんです、ラベルとかもしっかりしていて。

ヲノ そういうエネルギーはどこからくるんだろうね。好きな人に「My Best」みたいなカセットテープ作って送る人もいたでしょ。

平本 いますね、自作MDとか(笑)で。その足立君が小室哲哉についていっぱい教えてくれて、ライブ映像とか見たらたくさんシンセサイザー並べていて、そのガジェット感というかコックピットのような様子がカッコいいなと思って。

ヲノ あれは男のマロンですよね、敢えてマロンといいますが(笑)。あの、キーボードを三段重ねにして、砦というか要塞を自分の家に作ったりして悦に浸るっていう。

平本 それであまりにもそのマロンといいますか、キーボードに囲まれている姿が好きになってしまって、中1の終わりに小室哲哉のライブを見に行ったんですよ。そうしたら、その何段にも重ねたキーボードが上下に可動式で動くんですね。あれはビックリしましたね。

ヲノ それはもうX JAPANでYOSHIKIがドラムとクリスタルピアノを並べているのと同じ現象だよね。男の子がその様に喜々とするというか。

平本 YOSHIKIのドラムも上がりますしね(笑)。

ヲノ そこ大事なんだ(笑)、上がったり下がったりが。これはもう男特有の話だよね。カメラとかでも、コレクション欲が男はやたら強い。mocoさんはどうですか?

moco 私はどちらかというとそういう意味では男性よりだと思います。コレクション欲かなりありますし。昔ペッツとかも何百個と集めて。

ヲノ じゃあ男脳だ。子供見ていると明らかに2歳くらいから違うんですよ、男と女で。男子は大体鉄、金属、超合金が好きなんです。ミニカー、武器、仮面ライダー系とか。これが大人になるとカメラとかシンセサイザーとか録音機材になるだけで、変わっていないでしょ。ツマミが回せたり、ボタンが押せたりするのが大事だったりして、それはあまり2歳から変わらない部分だと思うんです。

平本 それはわかりますね。何もしなくても、ミキサー卓やシンセサイザーの前はテンションが上がるところがありますよね、ちょっと触っちゃおうと思ってしまう。僕は小室哲哉のその機材に囲まれている感が堪らなく好きで、結局その後もそういうキーボードとか発信器とかに囲まれている人を求めて、音楽聴くようになったんですよ。YMOとかプログレとか、ジョン・ケージがデビッド・チュードアとやった電子音楽とか。

ヲノ それは2歳の男子とあまり変わらないんですよね。一方2歳の女子は何をしているかというと、なんかシールを自分に貼ったりして、自分が好きなんだよね。自分を飾るきれいな服だとか、着せ替えごっこして、「これ私、これは〇〇ちゃんね」と感情移入したり。その頃から女性雑誌的なんですよね、「1週間着回しテク」みたいに。

平本 わかりますね。

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