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東京を巡る対談 月一更新

ヲノサトル(音楽家)× 平本正宏 対談 コミュニケーション好きの音楽

<男脳の快楽欲>

ヲノ 男の雑誌の中って、全部黒いじゃないですか、それかメタリック。いつまで経っても変わらない(笑)。基本的に「機材」が好きで、料理人の取材でもみんな自分愛用の道具を持っていて、読者もそこが見たい。「業務用」の機材が好きなんですよね(笑)。ミニカーいじっている2歳の男の子と変わらない。

平本 3つ児の魂100までっていうのは意外にあたっているんですね。その感覚はすごくわかりますもん。ラップトップも1台だけよりは、5台とか並んでいるとなんか嬉しくなってしまって、写真撮ってFacebookにアップしちゃったりしますし(笑)。

ヲノ そうそう。一番わかりやすいのは新しい機材が届いたときに、梱包を開けるのを面倒に思うか嬉しく思うか。最初に開けるときにニヤニヤしている自分がいたら、それは男脳だね。

平本 いやー、ニヤニヤしますね、それは絶対に。大体箱にその機材の小さな絵が書いてあるじゃないですか、それを見ただけで「うわ、中に入っているんだ!」って興奮が止まらなくなります(笑)。それで段ボール開けると、まだ発泡スチロールとか薄い白いカバーが掛かっていてまだ見れなくて、それをペリペリっと開けると、そこにピカピカの指紋一つ付いていない機材が現れるわけです。ここで興奮がピークに達して、しばらく、ひどい時は1週間くらい機材を見るたびにニヤニヤします。

ヲノ こういう話しても全く無関心の女性はたくさんいますからね(笑)。僕、前に奥さんに機材見せて「これいいでしょ?」って言ったら、「汚い」って言われたことありますね。「銀とか黒じゃなくて、もっとキレイな色無いの?」とか(笑)。

平本 切ない!! メタリック感とか木枠とかそういうのがいいんですけどね。

ヲノ だから心底超合金が好きで、それが染み付いちゃった結果なんでしょうね。

それで、曲を作るっていうのも男のそういう欲の延長線上なんだよね。平たく言うと、作曲って建築と一緒だと思うの。建築家が設計図書くのと、作曲家がオーケストラ・スコア書くのは全く一緒ですよ。施工を他の人にやってもらうのも、演奏を演奏家にお願いするのと同じだし。でもスコアは完全に自分のもので、そういうのを作る自分に酔いしれる。

平本 作曲している時の独特の高揚感ってありますよね。だから、機材欲と設計欲があれば誰でも作曲家になれるんじゃないかと?

ヲノ なれないんだけど(笑)。だからその欲望を中2くらいでこじらせてしまうと、こうなってしまうんですね(自分を指差して)。

いまいいのは、それが仕事にならなくてもパソコンで簡単に実現できる。昔はスコアだけ書いて演奏されずに消えていった曲がたくさんあるわけだけど、いまは簡単に鳴らすことができる。建築の場合はコンピューター内でバーチャルで作ったものはバーチャルに過ぎないけど、音楽の場合は実際にフィジカルに鳴らせることができるからバーチャルではないんですよね。

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