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東京を巡る対談 月一更新

成田憲保(天文学者)×平本正宏 対談 未知なる惑星を求めて



<2030年代までに第二の地球が発見される>

平本 いま研究されていることの目標はどういうものですか?

成田 まずは第二の地球と呼べる惑星を見つけることです。

平本 それは現状で時間としてはどれくらいかかると予想していますか?

成田 基本的に今天文学で考えられているのは、2020年代の頭ぐらいには太陽系の近くのハビタブルプラネットを発見したいというのが流れになっています。実際に先程話したテスという宇宙望遠鏡が打ち上がるのが2017年を予定とされていまして、それから2年くらいかけて全天をくまなく探します。その後に、実際に赤外線のドップラー効果で測定するような観測装置を使って、惑星の質量等を測っていきます。そういうフォローアップの観測も含めて数年間とすると、2020年代の頭ぐらいには実際にいくつかの惑星は発見されるであろうということになっています。

惑星の発見が2020年代の頭ぐらいであるとすると、その惑星がどういう惑星であるのか、大気にどういったものが含まれているのかといったことが調べられるのが、2020年代に入ってからになります。それは、TMTという30メートル望遠鏡で惑星の大気や質量を正確に調べます。あと2020年代には他の宇宙望遠鏡とかも打ち上げられて、それでも惑星の大気などを調べ上げることが出来る予定です。

平本 となると、2030年までにはかなり分かる、系外惑星への研究も大きな進歩を見せるわけですね。そんな日があと15年くらいでくるなんてワクワクしてしまいます。

成田 2030年までには、地球とまではいかないですけど、低温度星の周りにある第二の地球が太陽系の近くで発見されているということと、その惑星の性質を調べている段階まで進んでいるはずです。その先の、もしかしたらこの惑星には生命が住んでいるかもしれない、もう少し検証が必要だなという段階になっているかもしれません。そういうターゲットが見つかっていて、検証が必要だなという段階に進んでいたとしたら、おそらくその次の望遠鏡が必要になってきていて、宇宙望遠鏡で惑星の表面を調べなくてはいけなくなっているでしょう。

NASAが以前にテレストリアル・プラネット・ファインダー(TPF)というものを作ろうとして、開発が困難ということで今一時的に断念している計画があるのですが、それらもハビタブルプラネットが見つかってきたら再開されるなど、色々な可能性が出てくるかもしれないですね。そうすると、惑星の表面とかも観測できるようになるかもしれません。

平本 すべてが繋がっていて、大きな発見があれば更なる発見に繋がる動きが起きて行くわけですね。本当にうまくいって欲しいです、人間の生き方も影響を受けるかもしれませんね。

ちなみにですが、ここまでお話を伺っていて少し感じたのですが、全宇宙的に見て地球という惑星はやはり特殊なのですか?

成田 そこはですね、分からないというのが正しい答えだと思います。実は太陽というのは宇宙では少数派で、宇宙の中では低温度星の方が大多数なんです。宇宙の中では軽い星の方が量は多くて、太陽くらいの質量の星は結構マイナーで、太陽より重たい星もあるんですけど、さらに数が少なくなってきます。なので、太陽の周りを回る地球というのは、もしかしたら宇宙の中ではマイナーかもしれません。だから、宇宙の中でハビタブルプラネットについて考えたとしたら、低温度星の周りを回るハビタブルプラネットの方が一般的かもしれません。そういう星に生命がいたとしたら、地球の生命は特殊な環境に住んでいるなって思うだろうと思います。

平本 へー! 僕らの方が特殊だということになるんですね(笑)!

成田 あいつら昼と夜があるぞみたいに思われるかもしれません。我々の普通が宇宙的に見たら特殊になるかもれしれません。

平本 それこそ天動説・地動説じゃないですけど、こっちが普通だと思っていたけど、実は逆だったということもあり得そうですね。

成田 そこのところも調査する必要がありますね。太陽の周りにある地球のようなハビタブルプラネットが多いのか、低温度星の周りにあるハビタブルプラネットの方が多いのか、今のところはまだ確実には分かりません。ただ低温度星の周りにあるハビタブルプラネットの方が多い傾向があると言われています。ただ、低温度星の周りにハビタブルプラネットが見つかっても、生命が住めるものとは限らないですし。やっぱり太陽と地球のようなものが生命の故郷としてはメジャーなのかもしれないです。

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