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東京を巡る対談 月一更新

成田憲保(天文学者)×平本正宏 対談 未知なる惑星を求めて

<ハビタブルプラネット以外の様々な惑星>

平本 成田さんがご自身の研究者人生で、ここまでは結果を出したいというものは具体的にあったりしますか?

成田 まだ終着点は分からないんですけど、実際に今後見つける惑星に生命がいるかどうか分からないですし、その後どういう方向へ進むかはまだ分からないです。2020年くらいまではこんな感じで研究が進むんじゃないかなというのはありますけど、その後はまだ20年以上ありますので。

平本 でも2025年後といってももう10年後ですもんね。

成田 太陽系外惑星が初めて見つかったのは1995年のことなんです。なので天文学の中ではまだ新しい研究分野なんですよ。今に至るまでの20年間でものすごい量が見つかっているんです。後10年はまだ速いスピードで色々発見できると思います。なので2025年以降はどうなっているのか、どこまで分かっているのか、その先どの研究を優先するべきなのかは今は分からないですね。

平本 スピードが速い分、分からないですよね。

成田 基本的にはハビタブルプラネットというのは面白いテーマの一つではあるんですが、系外惑星の研究はそれだけではないんですよ。多くの人が興味を持たれるテーマではあるかと思うんですけど。僕も将来はそういうハビタブルプラネットについてもやりたいなとは思っていたんですけど、今までの研究テーマとしては、少し違うことをやっていました。まず、これまで多くの惑星が発見されてきて、様々な惑星があることが分かったんです。ではそういう多様な惑星ってどうやってできたんだろうっていうのが一つの研究テーマです。もう一つはそういう多様な惑星の環境がどうなっているのかについて。この2つの研究テーマを掲げてこれまで研究をやってきたのですが、まだその研究も完成したって訳ではないんですね。だから2025年になってもまだ変な惑星を発見できるかもしれませんから、どうやってその惑星ができたかとか、そういう惑星の環境ってどういうものなのかというのが、まだ面白い研究テーマとして残るのかもしれません。今日は結構王道のテーマを話してきました。かといってそれ以外のテーマは科学的には重要じゃないのかというと、そういうわけではなくてハビタブルプラネット以外のテーマも大事だなと考えています。

平本 ハビタブル以外の色々な環境のものを研究して今までに分かってきたことってどのくらいあるんですか?

成田 僕が主に研究してきたのは、ホットジュピターと呼ばれる木星型惑星です。太陽系だと、木星というのは公転周期が12年です。でも太陽系外だと、木星みたいな星が公転周期が1日とか2日のところにいたりするんですよ。

平本 えー、すごいスピードですよね! 木星の条件からはするととても想像できないようなところにいるんですよね?



成田 すごいスピードなんです。太陽系の木星をイメージしている限り、絶対に想像できないんですよ。そういう惑星が実在している。あと太陽系の惑星というのはとてもバランス良く円を描いています。でも太陽系外ではすごい楕円を描いているものだったり、すごい変な軌道の惑星があるんですよ。変というのは我々の常識からすると変であるだけで、実際に存在しているんです。そういう惑星の方がメジャーなのかもしれませんね。そうなると、その変な惑星というのはどうやってできたのかを明らかにしないと、太陽系も含めて多様な惑星系がどうやってできたのかって理解できないんですよ。

平本 その惑星の誕生であったり仕組みということですよね。

成田 どういう仕組みで多様な惑星というのが生まれたんだろうっていうのが一つの研究のモチベーションになっていて、どうやって惑星の軌道がいろいろ変わってきたんだろうというのを調べようとして研究をしてきました。その一環で逆行する惑星、つまり親星の自転に対して惑星が逆向きに公転している惑星を発見しました。

平本 それすごいですね!!

成田 すごいです。普通に考えると無理なんですけど、そういう惑星を作るシナリオはいくつかあって、例えば惑星同士がお互いをはじき飛ばしてしまうとか。親星の方へ飛んできてまた親星の周りで回り始めた時に逆向きになっていたという可能性もあります。他にもあって、太陽系で太陽というのは単独星と呼ばれていて、他の惑星の周りには回らず、自分だけ回っている星なんですけど、宇宙には連星というのが多いんです。

平本 グリーセも連星ですよね。

成田 そうです。連星というのが外側にあって、それが惑星に働きかけて、惑星の軌道を傾けちゃったりするんです。そのせいで逆向きに回ってしまうとか。そういうこともありうる。こういったいくつかのシナリオがあって、実際はどれなんだろうっていうことを知りたくて、一つ一つの惑星をよく観察して調べていくという研究をしています。

平本 そうなんですか。そうなると一個一個に普遍的な法則があるわけではないということですよね。

成田 いくつかのメカニズムがあって、この惑星系ではこのシナリオでできたとかあの惑星系ではあのシナリオでできたとかという個性があるんだと思います。惑星系というのは宇宙の中でこういう風にできるんだということを、沢山の惑星系を観測することで明らかにしていきたいなと思っています。

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