＜研究のマネージメントの大変さ＞

平本 やっぱりそういうコミュニケーションだったり、マネジメントに費やす時間の方が多くなってきていますか？

成田 そうですね。これも経験していなかったので分からなかったことではあるのですが、観測の装置を作ろうとしたら、部品の決定や設計の依頼などをしなくてはいけないので、こういう仕様にしたいというのをそれぞれの専門の方、工学系、部品を加工している業者などとやり取りをし、またCCDなど高額の部品を買おうとすると、事務との調整をして入札にしないといけないとか、入札をする時も仕様書を準備しないといけないなどがあります。仕様書についてもちゃんとした書き方があって、今まで知らなかった未経験の書類も作らないといけなかったりして、結果的に時間がとられてしまいました。１回経験してしまえば次からは速くなるかもしれないですけど、今回はなにぶん今までと違うことをやっていたので。

平本 その大変さはわかるかもしれません。作曲も純粋に自分のアルバムを作る時間よりは、依頼されて曲を作る時間が圧倒的に多いので、場合によっては依頼された内容に対してどういう楽器を使った音楽にするかをこちら側からいくつかプレゼンテーションしなくてはいけないときもあります。そういう場合、今度は予算も考えなくてはいけない。それこそ大規模なアンサンブルにして欲しいと依頼されたけど、予算が足りないので別の方法を考えたり、演奏家やエンジニアのスケジュールを調整したり、必要な場合は提出書類も自分で作ったりします。だから仕事の半分はマネージメントみたいなところはありますね。

成田 お金の問題はやっぱりありまして、いいものを作りたくてこういう機能も持たせてと考えて行くと、予算が高くなるので、この予算の中でできる一番いいものにしたり、追加で予算をとってきたりとかを考えなくてはいけないんです。思ったより大変だったのが、研究費とか人件費とかでやっぱり予算不足だったんですね。それで助成金を取るためにいくつか申請を出したりするんですよ。一つのところで助成金申請を出すにしても、書類を書かないといけなくなってきます。しかも採択されないことの方が多い。それがなんとかとれて、今まさに作っている装置が完成できるくらいのお金は用意することはできました。金策の面では思ったより時間がかかるんだなと思いました。

平本 そういうコミュニケーションが上手くいくと、成果が上がるというのは感じますか？

成田 そうですね。コミュニケーションが上手くいって、やっぱり１人で全部できるわけじゃないんだなと思うことが多いです。最近お金をとってくるとか、日本語の文章を書くとかそういった機会が多くなってきているんですが、解析とかで僕が作ったプログラムもあるんですけど、他のところを作ってくれている人とかもいて、そういう人たちと分担作業になっています。適材適所といいますか、この人をここを分担するとかのマネジメントもするようになって、基本的には１人では全部できないので、そういう意味ではコミュニケーションがちゃんとできないと、ちゃんとスケジュールを守れなかったリだとか、あとはこういう機能を付けたいんだというのもちゃんとコミュニケーションで伝えないと、いいレベルの装置にならないとか。または解析とかが大変になって時間がかかるようなものに仕上がってしまうとか。

平本 じゃあ、そういうことが無いようにコミュニケーションは細かく取ったりされている？

成田 そうですね。2014年の装置の開発では、ミーティングを開いたりとか、Skypeを使って話し合ったりとかしています。

平本 その相手というのは日本だけではなく、海外とのやり取りもあるんですか？

成田 今作っている装置に関しては日本だけです。たぶんテスとかについてはマサチューセッツの人がメインでやっているのですけど、僕は一応それに正式に参加していて、そのことについて来週ボストンに行くんです。そういう関係もあるので、海外の人とのやり取りも結構あります。

平本 新しいモノを開発するとなった時に、そういったミーティングってどれくらいの頻度でやっているんですか？　全体の状況管理も含め細かく進捗状況を知らないといけませんよね。

成田 段階にもよると思うのですが、今自分が責任者として作っている観測装置についてはメンバーやあるいは事務の人と毎日何かしらの連絡や相談はしています。

平本 それはやっぱり現在が作業の終盤だからというのはありますか？

成田 終盤だからというのもありますね。でも、今年はずっとそうだったかな。あとかなりの頻度でやり取りをしないと、スケジュールを守れなくなってしまうので、結構頻繁なやり取りはしていますね。今年の12月24日に装置を取り付けて最初の試験観測をする予定になっています。その為に来月中旬までに装置を組み上げて岡山に発送する予定です。

平本 へー！　じゃあもう本当にこの２カ月が終盤なんですね！　順調ですか？

成田 今のところ順調に進んでいます。ただ発注とかが順調に終わりつつあるというだけで、今月そういった部品が届いたり、僕が出張にいったり、一緒にやってくれている人も出張や観測があったりするので分担しながらやっています。

平本 それぞれの別のお仕事もしながらとなると、時間的に厳しい部分もありそうですね。

成田 ギリギリになるんじゃないかなと思います。

平本 でもそれがすごい結果を生み出すと素晴らしいですよね！

成田 ２年間かけて作ってきたものなので、いい結果を出せればいいなと思っています。